業界展望台

第3回クラウドコンピューティングセミナー
企業成長を加速させる次世代ICT

1月24日(月曜日)付 日刊工業新聞 17面-20面 広告特集から

 クラウドコンピューティングの概念は広く浸透し、企業への利点が明確になってきた。それぞれの企業に適したクラウドを見極め、本格的に導入する時期を迎えた。そこで、昨年12月8日に日刊工業新聞社は「第3回クラウドコンピューティングセミナー―企業成長を加速させる次世代ICT」を開催し、今後のクラウドの動向、ICT企業のサービスを紹介。多種多様なサービスの中から、期待する効果を最大限に発揮できるサービスに出会う場となった。

【基調講演】 「スマートクラウド戦略」

総務省 情報通信国際戦略局
 情報通信政策課長 谷脇 康彦氏

情報通信政策課長 谷脇 康彦氏

クラウドの普及、産学連携が要に

 わが国はブロードバンド基盤の整備が進んでおり、2010年度末までに「ブロードバンドゼロ地域」が解消されるめどが立ちつつあります。今後は、ブロードバンド加入率の向上が重要な課題ですが、行政、医療、教育などの公的サービス分野を中心に、ICTの利活用が遅れており、ブロードバンドの持つメリットを利用者が十分享受できていない状況にあります。ICTの利活用の立ち遅れは社会経済の効率化や付加価値の向上を阻んでいる面もあり、わが国の持続的な経済成長の実現や国際競争力の向上といった観点からも重要な政策課題となっています。

 こうした問題意識の下、10年6月に閣議決定された「新成長戦略」における七つの基本戦略の一つとして、「科学・技術・情報通信立国戦略」が掲げられています。そして、この基本戦略を実現していくための21の「国家戦略プロジェクト」の一つとして、「情報通信技術の利活用の促進」が掲げられています。

 さて、クラウドコンピューティングサービスはブロードバンド基盤があってはじめて真価を発揮するものであり、また従来よりも安価で柔軟なコンピューター資源の活用を可能にします。したがって、クラウドサービスの普及を契機として、さまざまな分野でICTの利活用を進めていく必要があります。

 具体的には、医療、教育、農業などの分野でクラウドサービスを活用した新しいソリューションの開発・普及が期待されます。

 例えば、医療クラウドの構築により、電子カルテなどの電子データを集約し、これを基に新薬の開発や新しい治療方法の開発を推進することが可能になります。また電子教科書などを活用した教育の情報化も重要な課題ですが、生徒一人ひとりの習熟度などのデータを教育クラウドに集約し、より効果的な教材や指導法の開発を推進することが可能になります。

 農業クラウドの構築も重要課題です。天候、田畑の水温などの情報をセンサーネットワーク経由で収集し、どのような農作業を行うことが最適かといった情報を農業クラウドに集約し、農業従事者の方が持っている貴重なノウハウを蓄積・活用することで、いわゆる農業の「6次産業化」を進めることも期待されます。

 クラウドサービスは社会インフラの高度化にも貢献することが期待されます。具体的には、リアルタイムで発生する膨大なデータを効率的に集約・整理し、社会インフラの運用の効率性を飛躍的に高めることが可能となります。例えば、環境に優しいエネルギー網として注目されているスマートグリッド(次世代電力網)とクラウドを組み合わせることで、各家庭のスマートメーターから収集される電力の消費量や発電量を基に、きめ細かい電力需給の調整を行い、環境に優しい電力供給システムを構築することが可能となります。

 「スマートクラウド戦略」では、09年のクラウド関連市場を3900億円程度と見ています。しかし、クラウドサービス市場は大きく成長し、15年時点で現在の市場規模の約6倍の2.4兆円の市場になるだろうと見ています。

 クラウドサービスの普及を促進していくためには、産学官の連携強化も重要な課題です。このため「スマートクラウド戦略」を踏まえ、産学官が連携してクラウドサービスの普及を進めていく「ジャパン・クラウド・コンソーシアム」(WWW.japan-cloud.org)を立ち上げる方向で準備が進められています(注)。具体的には、日本経団連を中心に、クラウドサービスに関連するさまざまな分野の企業・団体に参画いただき、クラウドサービスの普及に向けた具体的なプロジェクトを提案していただく。提案企業とコンソーシアムのメンバー企業などが連携しながら検討を進めていくこととしています。

 このコンソーシアムには、総務省と経済産業省もオブザーバーとして参加することになっており、コンソーシアムでの議論・提案を踏まえ、クラウドサービス普及に向けた政策に反映していくことにしています。

 クラウドサービスの普及に向けては、利用者の視点に立った標準化のほか、膨大なデータ処理を迅速に行う技術やセキュリティー技術、環境に優しいグリーンクラウドの技術も求められます。こうしたクラウドサービスに関連する標準化や研究開発については、グローバルな観点で国際連携の下で推進していく必要があります。

 そのほかにも、グローバルな視点で考えるべき検討課題があります。インターネットの普及に伴って、これまでも国境を越えたデータの流通は増加傾向にありました。しかし、クラウドサービスが普及することで、ボーダーレスなデータの流通の比重が飛躍的に高まることになると考えられます。

 その際、例えば知的財産権の問題があります。海外のデータセンター(DC)で日本企業がデータを蓄積・処理して、新しい価値、知的財産が生み出されたときに、一体どの国の法律で知財が保護されるのか。こういった問題も出てきます。

 つまり、データの処理や流通がボーダーレスに行われる中で、一つの国の法律では必ずしも扱い切れない問題が生まれます。個人情報保護、裁判管轄権、企業コンプライアンスのあり方など、多岐にわたる項目について検討が求められます。したがって、クラウドサービスに関連した国際的なコンセンサスをどう醸成していくのかが重要になります。

 10年10月末、沖縄でアジア太平洋経済協力会議(APEC)の電気通信・情報産業大臣会議が開催されました。この閣僚会議では片山善博総務相が議長を務められ、「沖縄宣言」が採択されました。この宣言にはICTの利活用の推進が重要であるという点が盛り込まれましたが、その中でクラウドサービスの意義についても取り上げられました。このように、多国間の場を通じて、クラウドサービスの普及によるICTの利活用の重要性について、グローバルなコンセンサス作りに取り組んでいます。

 二国間の政策対話も開始しています。11月には、日米インターネットエコノミーに関する政策対話の第1回会合が東京で開催され、日本側からは総務省のほか、外務省、経産省などが参加しました。米国からは国務省、連邦通信委員会(FCC)、商務省などが参加し、クラウドサービスを巡る諸課題について意見交換を行いました。

 今回の政策対話では両国がクラウドサービスの重要性を認識しつつ、ベストプラクティスや国際的な原則の確立に向けた情報の共有化、多国間協議の場において日米が連携した働きかけを行っていくことなどについて合意しました。また韓国との間でも、10年9月から放送通信委員会と総務省との間で、課長級のクラウド政策対話を開始しています。このように、グローバル観点での政策対話は、今後ますます重要になっていくものと考えられます。

 クラウドサービスは、ICTのパラダイムシフトをもたらすものです。日本経済再生に向けた「切り札」として、産学官連携によって普及を推進していく必要があります。

(注)ジャパン・クラウド・コンソーシアムは10年12月22日に設立総会を開催しました(12月19日現在、180社・団体が参加)。引き続きホームページで会員募集中。

セミナー当日に配付された資料



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