業界展望台
産業の進展を支える基盤技術 粉体技術
2月25日(金曜日)付 日刊工業新聞 15面-17面 広告特集から
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物質は温度や圧力などによって固体、液体、気体などに変わる。水が氷や水蒸気に変わるように見た目も性質も変化し、固体には固体、液体には液体特有の性質を示す。ところが、ひとつ一つは固体だが、それがたくさんく集まると液体とも気体ともいえる性質を示すものがある。それらを「粉体」と呼んでおり、簡単には"粉の集まり"とも言える。粉は集まると凝集や架橋などを発生させ、時には爆発も起こす。これらのトラブルを防ぐのが粉体技術。粉は微細化すれば、さらにトラブルが増えることから、ナノ(ナノは10億分の1)化が進展している現在では、粉を上手に制御する粉体技術の重要性が高まっている。
【物質のナノ化加速】
最近、ナノテクノロジーやナノマテリアルのように「ナノ」という言葉を耳にする機会が増えている。縦・横・高さが100ナノメートルを下回る物質やそういう物質を作る技術を指すが、大学の研究論文はもちろん、今や化粧品のパンフレットなどにも登場しており、かなりポピュラーな言葉となっている。これだけナノが注目されるにはいくつか理由が挙げられる。
まず、物質は表面積によって反応の大きさが変わる。仮に一つの固まりを100個の粒子に砕くと、重さはかわらないが表面積が広がるため、強い反応が期待できる。一つの固体の場合と同じ反応が必要ならば、その物質は少量で済み、小さくできるほか、同じ量ならより反応を強くでき、高性能化が図れる。
さらに粒子がナノサイズまで小さくなれば、人の細胞の中にまで入ることが可能になる。これをうまく使えば、がん組織など身体の患部だけに集中して治療薬を送り、健全な細胞を傷つけることなくがん細胞だけを死滅させられる。
これらのほかに微細化すると今までにない新たな特性が発現する可能性がある。例えばシリコンナノクリスタルなどの発光素子は、大きさの異なるナノ単位の粒子径を作ると、同じ物質でRGB(赤、緑、青)にそれぞれ発光する。これらの理由などから、産業分野はもちろんのこと、食品や医療など幅広い分野でも物質のナノ化が加速している。
ところが、これらの物質は多く集まるほど、また、一粒自体が小さくなるほど「悪さ」をする。具体的には凝集(1点に集まって固まる)、架橋(橋をかけたような形状に固まる)、粉じん爆発などを起こす。さらに「ばく露」のように知らないうちに体にその物質を取り込む可能性もある。
そこでこれらのトラブルを抑えて安全に効率的に粉を扱う「粉体技術」が、注目されている。
粉体技術は粉を「作る」「計る」「運ぶ」技術。小麦粉やそば粉などを作る古くからある技術だが、製造工程の中で使われるケースが多いためあまり知られていない。しかし、この技術をうまく活用できなければ、最終製品の安定した品質はもちろん、ムダに材料や生産時間を使うこととなり、最終的には市場における競争力を失いかねない。
粉体技術は具体的には粉砕や分級・ふるい分け、バルクハンドリング(貯槽・供給・計量・輸送)、計測・制御、造粒・コーティングなどの一連の作業における粉の制御技術を指す。
これら粉体技術を有効に活用することで、製品の品質をより向上させ、新たな性質を付加させるほか、効率的な生産や搬送も可能にする。このような効率化や高付加価値化につながる粉体機器がさまざまな分野向けに次々と登場している。
【粉を「作る」「図る」「運ぶ」-最新機器開発続々と】
粉砕機ではローターなどの機械駆動部分がなく、メンテナンスが簡単な固定式の分級機構を持つジェットミル(粉砕機)が発売されている。駆動部があるローター式に比べ、清掃や洗浄が簡単で本体を丸洗いできるのが特徴。主に電池や医薬品をターゲットとし、製品粒度は3マイクロ-30マイクロメートル(マイクロは100万分の1)で、毎時100グラム-10キログラムの処理能力を持っている。
粉砕と分級をシステム化した装置にも新製品が登場している。システムは乾式粉砕機で粉砕した原料を空気搬送で分級機に送り、粗い粉と微粉に分類する。粗い粉は再度粉砕処理し、微粉はサイクロンやバグフィルターで回収する仕組み。粉砕機単体ではエネルギー効率が落ちる粒径20マイクロメートル以下への石英やシリカなどの高硬度無機質物の粉砕に適している。
さらに衝突板に原料の粉体を衝突させ、直径1マイクロ-5マイクロメートルの大きさに粉砕するターゲット式の粉砕機も開発されている。

冬山で見られる霧氷は水が固体に変化して凝集した
自然美、粉体でもよく似た現象が起こる
内部のセラミックス部品に負荷に強い特殊な微細構造を採用することで金属の混入を防ぎ、従来の直径5マイクロメートル以上の粉体だけでなく、これまでのターゲット式では難しかった1マイクロメートルの粉体も効率的に生産できる。リン酸鉄やカーボンなどの電池材料、化粧品、医薬品向けに販売する。
また、加圧位置が1マイクロメートル、加圧力は10キログラム単位で制御できる電動式の精密粉体成形装置も登場している。半導体部品や精密工具などの精密成形向けで、セラミックス部品や二次電池の負極材は成形密度のわずかな変化で特性が変わることから、位置制御機能を高度化した。金型交換や調整がしやすい筐体(きょうたい)がCの形をしたタイプと力が均等にかかるため、量産時の精度がより高い4本の真ん中に金型を置く構造のタイプをそろえている。
一方、輸送関連機器では機能を簡素化し、低価格でコンパクトな自動定量袋詰機が発売されている。小麦粉やそば粉など生産量が比較的小規模な事業所向けで、単体で袋詰機を導入する作業場に適しており、高さ制限のある場所にも置ける。5キロ-25キログラムの各袋に対して20-30秒(硬質1等小麦粉25キログラム詰めの場合)で充填(じゅうてん)できる。
機体の素材には衛生面からステンレスを使い、充填する袋は清潔、安全、効率性などを重視し、密閉性が高く異物混入が防げるバルブ袋を採用した。
【価値アップへ研究活発】
さらに粉体を計測する装置では原子レベルまで直接観察できる顕微鏡が開発されている。フェムト秒(フェムトは1000兆分の1)の時間分解能を持つ超短パルスレーザーを使ったナノスケールの空間分解能を持つ走査型トンネル顕微鏡で、重川秀実筑波大学教授らが開発した。
これまで微細な局所構造の特性をナノスケールで直接解析する手段はなかったが、トンネル電流をプローブすれば、デバイスの中の原子レベルの欠陥などが測定できる。さらに偏光を使えば、スピンを対象とした解析も可能になるほかテラヘルツ(テラは1兆)光源を使えば、超電導物質の解析などにも使えるという。
製造現場での計測装置ではデジタルデータ処理する静電容量式粉体流量計が発売されている。配管の途中に設置し、温度、湿度、粉体の含水率、搬送圧力などが測れる計測器で、粉体の検出から出力までをデジタル演算処理し、従来のアナログ式と比べて精度や計測範囲を向上させている。測定可能最小濃度は1ミリリットルあたり数ミリグラムで、センサーとデータ処理装置は一体型となっており省スペース化も図れる。
これらだけでなく造粒やコーティングなどにも数多くの新製品が市場に登場しているが、これらの粉体機器を活用し、付加価値の高いナノ粒子やナノスケールの応用物が続々と生まれている。

雪も粉体としての性質を持ち、集まり重なる
ことで雪崩などさまざまなトラブルを引き起こす
京都大学の北川宏教授や九州大学などの研究チームは水素を吸蔵し、貯蔵できるナノサイズの合金を開発している。合金はロジウムと銀を原子レベルの10ナノメートルまで細かくして混ぜることで現在、水素吸蔵材料として使われているパラジウムのおよそ半分の量の水素を吸収する。ロジウムも高価だが、この手法を応用すれば、資源確保が課題とされるレアメタルであるパラジウムを使わずに燃料電池用の水素吸蔵材料を作る研究の進展が期待できる。
産業技術総合研究所の清水博招聘(しょうへい)研究院らの研究グループは、白金の代わりに多層のカーボンナノチューブ(CNT)を使った色素増感型太陽電池の対極材料の開発に成功している。
通常、対極材料には高価なレアメタルである白金をコーティングしたガラス基板が使われるが、変換効率や電流密度などの特性でほぼ白金と同じ特性を示すことを確認した。CNTは導電性に優れ大量合成できるが、粉末状であることから成形性や分散性に課題を持つ。その問題を解決したことで対極材料への応用が図れ、製造コストの低減や大面積化の技術につながるという。
これら以外にもさまざまな大学や研究機関で新たな付加価値を持ったナノ粒子が誕生している。もちろん、実験段階における計測から期待する成果をあげて商品化に至る段階まで、粉体技術が重要な基盤技術としてこれらナノ粒子の誕生を支援している。
粉の高付加価値化がさまざまな分野で進む現在、これらをコントロールする粉体技術に寄せる期待もますます大きくなっている。
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