業界展望台
人々の生活を守る医薬品
2月28日(月曜日)付 日刊工業新聞 20面〜24面から
<出稿企業一覧>
医薬品市場は新興国では急成長が見られるものの、米国ではヘルスケア改革が懸念され、欧州では経済危機を背景に薬剤費抑制策が検討・実施されている。国内では円高、株安と経済の低迷が続き、政府の方針に基づく後発医薬品のシェア拡大が進んでいる。
新薬創出加算の完全・恒久実施に向け
2010年度の薬価引き下げは5.75%と大幅で、後発医薬品のある長期収載品には2.2%の追加引き下げもあり、長期収載品を多く抱える企業に大きな打撃を与えている。現在、日本製薬工業協会(製薬協)が最重要と位置付ける課題は、「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」制度の12年度からの完全・恒久実施の実現。同制度は特許期間中の新薬の薬価は維持し、特許が切れた後は後発医薬品に市場を委ねる、というものだが、医療機関からは「新薬の実質値上げ」と受け止められ、医薬品卸各社は対応に苦慮している状況だ。
さらに、後発医薬品のある長期収載品の追加引き下げにより、製薬会社は長期収載品の卸への仕切り価格を引き上げており、医薬品卸各社は製薬会社と医療機関の板挟みとなり価格交渉が難航、売り上げ総利益が減少し、経営悪化が懸念される。同制度の完全・恒久実施には、医療機関など関係者の理解が不可欠なだけに、11年度は理解促進活動への取り組みも重要だ。
また有識者会議から開発要請のあった未承認薬・適応外薬については、「未承認薬等開発支援センター」と協力して進めており、今年3月末までにはすべての要請に対応する予定。


製薬協、アジア各国と対話を開始
米国で販売承認される新薬の半分以上がバイオベンチャー企業が創製した物質となっている現在、日本での創薬、研究開発基盤、臨床研究体制の一層の整備の重要性が高まっている。この問題の解決には法人税率の軽減、研究開発減税の継続、エンジェル税制の対象を個人投資家から企業にも拡大するなど、横断的な施策が必要。
製薬協では(1)科学技術政策に関する強力な司令塔機能を強化し、各省庁の科学技術予算を政府全体で統一的に編成し、ライフサイエンスの重要課題に重点的に投資(2)早期臨床試験体制の整備、重点疾患の治験体制のネットワーク化など開発力強化と効率的な対策を推進(3)新薬創出に必須の国際的かつ学際的人材を養成するための仕組みについて早急に官民で検討(4)医薬品に関連するベンチャー企業が根付き、成長できる対策を実施-などを11年度の事業計画に盛り込んだ。
さらに、製薬協ではアジア各国の製薬団体との連携に向け対話を開始。今年4月にはアジア12カ国・地域の13製薬団体に呼びかけ「第1回アジア連携会議(仮称)」を東京で開催し、民間レベルでの連携を深める予定。同会議のミッションは「革新的な医薬品をアジア各国の人々に速やかに届ける」ことであり、その達成のために解決すべき問題を共有し、改善を図っていく。
製薬各社の業績見通し
製薬主要8社の11年3月期連結業績見通しは、米国での主力製品の特許切れや、後発医薬品の影響を受ける武田薬品工業、アステラス製薬、エーザイ、田辺三菱製薬が減収の見込み。武田薬品、アステラス薬、田辺三菱薬、塩野義製薬が従来予想を維持する一方、研究開発の進ちょく遅れや効率化を進めた第一三共と大日本住友製薬、大正製薬が利益を上方修正した。
武田薬品は引き続き米国で特許期間が満了した消化性潰瘍治療剤「プレバシド」の大幅減収が響く。第一三共は研究開発費を中心に経費の執行が遅れるため経常利益、当期利益が上ぶれる見込み。アステラス薬は免疫抑制剤「プログラフ」と排尿障害改善剤「ハルナール」が米国での後発医薬品発売の影響を通期で受けるため、10年度が業績の底と位置付ける。エーザイは米国でアルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」が後発医薬品の影響を受け、売上高予測を下方修正し減収の見込み。
田辺三菱はライセンス契約にかかる一時金収入や、製造受託品などの減少が売上高に響く。大日本住友薬は研究開発費が減少することから、経常利益と当期利益を上方修正、減益幅を縮小する。塩野義は海外子会社の減損損失や事業構造改善費用などの特別損失、前期の株式交換益がなくなり当期利益は減益となる見込み。大正製薬は、研究開発費や広告宣伝費を見直した結果、経常利益、当期利益が増加する見込み。
10年12月に東京証券取引所第1部に株式上場を果たした大塚ホールディングス(HD)の医療事業の4-12月期業績は、売上高5453億円(前年同期比2.1%増)、営業利益が1042億円(同8.7%減)の増収減益。胃炎・胃潰瘍治療剤「ムコスタ」が薬価や後発医薬品の影響を受けて前年同期比59億円の減少となる中、主力の抗精神病薬「エビリファイ」やがん関連が伸長した。
しかし、売上原価や研究開発費が増加し、利益を圧迫。米国ではエビリファイの処方箋が双極性障害やうつ病向けに増加しているほか、ブリストル・マイヤーズスクイブとの契約更新により10年以降も米国販売に関する収益基盤は強化された。
11年3月期連結業績見通しは売上高1兆1380億円(前期比5.0%増)、経常利益1290億円(同18.3%増)、当期利益797億円(18.2%増)を見込む。セグメント別は公表していないが医療事業売上高は7397億-7966億円が想定される。

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