業界展望台
中長期的な視点でのクラウド活用が大切
−製造業をサポートするIT
6月30日(木曜日)付 日刊工業新聞 16面-17面 広告特集から
<出稿企業一覧>
| 企業名 | 新聞広告 | |
|---|---|---|
| 大興電子通信 | 日本の製造業をもっと元気にするクラウドは、こちら・・・ | |
| GXS | GXSクラウドサービスでBCPが構築可能に | |
| ネオジャパン | 緊急時の情報収集はクラウドグループウエア「デスクネッツ」で | |
| 日本ストラタステクノロジー | お客さまのビジネス価値を最大化する「ftServer」 | |
| ミロク情報サービス | MJSは、財務と経営システムのリーディング・カンパニーです。 |
ノークリサーチ シニアアナリスト 岩上 由高
2011年3月11日に発生した東日本大震災は広範な地域に極めて甚大な被害をもたらした。あらためて、被災された方々へのお見舞いとともに今後の復旧と復興を心より祈念したい。今回の震災を受けて、昨今ではIT活用の場面でも少なからぬ意識の変化が見られる。その代表例がクラウドコンピューティングの活用だ。ここでは製造業がクラウドを活用した災害対策に取り組む際のポイントについて解説していくことにする。
製造業が取り扱うデータは生産計画、部品表、入出庫、購買/調達など実にさまざまだ。これらのデータは企業規模に応じ、スプレッドシート(表計算ソフト)への手作業による記載や、「生産管理システム」に代表される各種システムによって管理されている。だが、地震や火災によって自社内に置かれたサーバやパソコンが損傷すれば、これらのデータは消失してしまう危険がある。そうなれば製造設備自体が稼働できたとしても、それを制御する術を失ってしまうことにもなりかねない。こうしたリスクを回避するため、製造業にとって不可欠な各種データを堅牢(けんろう)なデータセンター(DC)に預けるクラウド活用への関心が高まりつつあるのだ。
しかし、「いつ起こるかも分からない災害のために手元のデータを社外へ預けるのは抵抗がある」と考える企業も少なくない。確かにクラウドへ取り組むには相応の手間とコストが発生する。それに見合うだけのメリットがあるのかについて考えるのは当然といえるだろう。それを裏付けるのが以下の調査結果だ。
図1は年商500億円未満の中堅・中小企業に対して「東日本大震災を踏まえて新たにIT投資を実施/検討する際に重視する事柄」を尋ねた結果である。「災害時のみならず、通常業務においても業績改善やコスト削減の効果を得るようにしたい」という回答が最も多く、半数弱に達していることが分かる。つまり、災害対策が注目されるものの、平常時におけるメリットも同時に実現するIT活用が求められている。
図1 東日本大震災を踏まえて新たにIT投資を実施/検討する際に重視する事柄(複数回答可)

そうした観点で見た時のクラウド活用はどうだろうか。クラウドはIT機器を所有しないことによる費用面での負担軽減のみが強調されがちだ。だが、それ以外のメリットもある。
製造業の場合、「指定された期日までに必要な数量を製造するにはどのような部品/資材をいつまでに揃(そろ)える必要があるか」を迅速に把握する必要がある。部品表の展開と所要量の計算から、それに基づく在庫確認や発注手配までの一連の作業を迅速に行うには性能の高いIT機器が必要となる。繁忙期に合わせて高性能なサーバを購入したとしても、通常時にはそこまでの性能は必要ない。結果的に平均的な性能のサーバを選ぶことになり、繁忙期の業務スピードが上がらないという悩みを抱えることになる。
だが、クラウドであれば事業者が用意したIT機器の性能を存分に活用することが可能だ。繁忙期であろうと通常時であろうと、必要な処理を必要な時に実行すれば良い。このようにクラウド活用においては災害対策だけではない平常時のメリットも考慮に入れることが大切だ。
また、「社外にデータやシステムを預けると、社内に置いた時と比べて何かと不便になる」という懸念を持つ企業もある。確かに、旧来のDCの中には社内からだと限られた方法でしかアクセスすることができず、社内に置かれたほかのシステムと連携が難しくなるといった課題もあった。
しかし、昨今のDCではこうした課題も解消されつつある。図2が示すように、社内とDCの間を「VPN(Virtual Private Network)」というネットワーク技術で結ぶことによって、DC内に置かれたサーバがあたかも自社内にあるかのように扱うことができる。さらに、セキュリティー対策やログ管理などの基本的な運用管理作業は事業者側に任せることができる。「物理的に離れた場所にあることが不便さにつながってしまう」。こうした状況は、もはや過去のものになりつつあるといっても良いだろう。
図2 データセンター活用の進化

もう一つの災害対策重要ポイント 社員がITを活用できる環境の確保を
災害対策に際して忘れてはならない重要なポイントがもう一つある。それは「社員がITを活用できる環境の確保」だ。東日本大震災においては首都圏の公共交通網がマヒ状態となり、多くの帰宅困難者を出すことになった。今後も同様の広域災害が起きれば、社員の大半が出社できないという状態も十分考えられる。データやシステムが堅牢で自己発電の設備を備えたDCで守られていても、社員がそれらに触れることができなければ業務停止という状態に何ら変わりはない。
実はDCやクラウドを活用できる余地がここにもある。東日本大震災発生後、大企業を中心に「社員のパソコン環境をDCやクラウドに預ける」という動きが活発化しつつある。これまで社内に置かれていたパソコン内のデータやアプリケーションをDC内に配置することで、社外や自宅からでも安全に各自の仕事環境を利用できるようにする仕組みだ。
データのみを預けておくのか、各種アプリケーションも含めて社内のデスクワークを完全に再現するのかによって、コストは大きく変わってくる。自社が考える災害対策ポリシーと予算に応じて最適なものを選ぶと良いだろう。この場合においても「在宅勤務を可能にすることで社員の通勤負担を減らす」といった平常時のメリットも併せて検討することが重要である(図3)。
図3 個々の社員のデスクワーク環境も考慮した災害対策の重要性

海外展開でも重要な役割
ここまで述べたDCやクラウドの活用はいずれも「現状の維持や、現状の枠内で効率化を図る」という観点での取り組みといえる。だが、日本の製造業を取り巻く状況は次第に厳しさを増している。少子高齢化によって国内市場における今後の大きな伸展は期待できない。一方で、消費拡大が期待される新興国市場においては各国が激しい競争を繰り広げている。こうした中、日本の製造業においても「海外展開」は不可避の取り組みとなってきている。図4は年商500億円未満の中堅・中小企業に対し、「海外へのビジネス展開を実施/予定しているか。その際に海外に拠点を設けているか/いないか」を尋ね、その結果を業種別に集計したものである。製造業は他業種に比べ既に多くの企業が拠点を伴う形で海外へ進出している現状が読み取れる。
図4 海外へのビジネス展開状況

海外で競争力を発揮するには国内と緊密に連携した情報活用が不可欠だ。その際に国内と海外でバラバラにIT機器を導入していたのでは運用管理の手間が大きな負担になる。海外拠点に重要なデータを置くことによる財産保護の観点からのリスクもある。つまり、海外展開を進めるという観点でもDCやクラウドにデータやアプリケーションを預けるという取り組みが重要な役割を果たすことが分かる。
東日本大震災は多くの企業がDCやクラウドの活用を検討する一つのきっかけとなった。だが、重要なことは災害対策に限定してしまうのではなく、平常時の業務効率改善や海外展開といった中長期な視点でのメリットも得られる形で取り組むことが極めて重要だ。本稿がその一助となれば幸いである。
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