業界展望台

第2回スマートグリッドICTセミナー
ICTが新生日本と次世代エネルギー市場を牽引する

8月3日(水曜日)付 日刊工業新聞 23面〜25面 広告特集から

 今年3月に発生した東日本大震災の影響で、電力不足が叫ばれている。企業、家庭では節電対策に取り組み、電力の使い方が見直されている。これまでも電力を効率良く使うスマートグリッド(次世代電力網)は注目されていたが、より早い導入が求められ、効果に期待が高まる。日刊工業新聞社は6月15日に東京・有明の東京ビッグサイトで「第2回スマートグリッドICTセミナー-ICTが新生日本と次世代エネルギー市場を牽引(けんいん)する」を開催した。政府、企業の視点から震災後の日本に必要とされるスマートグリッドの重要性を考えながら、普及に向けた課題やこれからの動向を720人の聴講者に紹介した。


【基調講演】国内外でのスマートグリッド・コミュニティ実現に向けた政策展開

経済産業省 商務情報政策局
情報経済課課長補佐 松田洋平氏

松田洋平氏

 経済産業省ではスマートコミュニティーについて情報政策の立場とエネルギー政策の立場をミックスして政策を展開しています。今回は情報政策から見える分野を中心に、政策展開の方向性を話させていただきます。

 まずはスマートメーターの重要性です。世界中でスマートグリッド(次世代電力網)の最初の投資はスマートメーターから始まっており、欧米を中心に実装段階の普及が進んでいます。

 スマートメーター制度検討会では、日本としてスマートメーターを導入するにあたっての基本的な事項が整理されています。

 その一つが電力使用情報がデジタル化・ネットワーク化され、需要家を含めた関係者に提供されることの重要性です。電力事業者は柔軟な料金プランの提供が可能になり、需要家の料金選択肢が増えます。また、需要家は電力使用量などの見える化のみならず、スマートメーターをホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)と連携させることで、個々のニーズに応じた空調などの最適な制御が可能になります。そのためにも、スマートメーターから直接HEMS側に情報提供するルートの構築が極めて重要です。

 また、電力会社のメリットとして、遠隔検針や遠隔開閉機能の追加が可能になることに加え、柔軟な料金体系の導入によるピークシフト・カットなどを実現し、中長期的な設備投資を削減できる可能性があります。導入拡大が見込まれる再生可能エネルギーについての需給パターンを詳細に把握した需給管理の高度化も可能になります。

 さらに、スマートメーターからスマートハウス側へ提供される各種情報を活用して省エネアドバイス、家電メンテナンス支援などの多様な新サービスが生まれてくる可能性もあります。それが、最終的には消費者の生活の質の向上や社会的なメリットにつながっていきます。

 次のポイントは電力使用情報の取り扱いです。スマートメーター制度検討会で最も議論になり、最も整理が進んだところではないかと思います。

 ここでは個人情報保護法が一つのカギになります。ちなみに、スマートメーターの導入が進展しつつある米国には日本のような個人情報全体をカバーする一般法は存在しておらず、議論の前提が異なる点に注意が必要です。

 日本の法令において電力使用情報は需要家自身に関するものであり、個人情報に該当するのが通例です。そして、個人情報保護法の背景にある、需要家による自身の個人情報の十分な自己コントロールを確保するという基本的な考え方を踏まえれば、電力使用情報は電力会社などから需要家などに対して適正に提供されるべきものと整理されています。

 個人情報にいわゆる所有権はありませんが、情報のコントロールという意味ではまさにこれは需要家のものだろうということでまとまりました。

 さらには、スマートメーターから提供される情報について整理されています。基本的には電力使用量、逆潮流値、時刻情報といったものが考えられています。

 また、今後、省エネルギー、二酸化炭素(CO2)排出量の削減という観点から電力料金などに関する情報についても、先ほどの電力使用情報とともに需要家および需要家が許可したサービス事業者などに提供していくことが重要になると考えられます。

需要家のメーター情報の取得方法

 関連する法令としては個人情報保護法に加え、省エネルギー法があります。同法の中では、エネルギー供給事業者は需要家の省エネ行動に資する情報の提供に努める旨が定まっています。これに基づき、すでに電力会社は多様な情報を需要家に提供しています。こうした情報の利活用の状況なども踏まえながら、今後、個別の具体的な情報提供のあり方の検討を進めていくことが重要です。

 東日本大震災後の電力需給の厳しい状況の中でスマートメーターに関するさまざまな議論が行われていますが、スマートメーター制度検討会の成果を十分に生かして具体的な検討を進めることが重要です。

 ここから海外展開に向けた課題と取り組みを紹介します。経産省はスマートコミュニティーの海外展開を重要分野として位置付けています。

 新興国を中心に大規模な都市が勃興(ぼっこう)する中、最初からITを駆使して環境エネルギー制約を克服しようと世界中でスマートシティー開発が計画されています。こうした中、欧米、韓国などのIT・エレクトロニクス企業を中心に各国の企業が市場獲得を競い合っています。

 日本は、個々の製品やシステムの技術力については世界最高レベルにあると考えられます。

 他方、スマートコミュニティー構築においては個々の機器・システムを融合・統合するインテグレート機能が重要であると考えられます。例えば、ITを駆使したエネルギー管理システム、再生可能エネルギー、蓄電池、スマートハウス・ビルなどを含め、システム全体のアーキテクチャーを描き、関連企業をまとめ上げていくような存在です。経産省としては、こうしたインテグレーターである中核的企業の創出に向けて予算措置やリスクマネー供給支援などを重点化していくことが重要と考えています。

 また、世界各国での日本企業コンソーシアムによるプロジェクト展開を支援していますが、こうした支援をさらに拡大していきます。インドではデリー・ムンバイを結ぶ鉄道網の整備に合わせ、周辺地域で日本企業連合がスマートコミュニティー構築の事業可能性調査に取り組んでいますが、今年5月には既存の4案件に加え、インド政府の要請を踏まえつつ2案件の追加支援を開始しました。さらに、シンガポール、インドネシア、ベトナム、中国などのアジア、ブルガリアを中心とする東欧地域、アラブ首長国連邦(UAE)などでの日本企業コンソーシアムによる事業検討調査の支援を開始しています。

 海外実証事業を合わせて20近いプロジェクトの事業検討調査の支援を開始していますが、こうした支援を拡充するとともに、特に波及効果の大きい案件を重点的にサポートして事業化を促進していくことが重要と考えています。

 震災後のさまざまな状況の中で、今後、世界中でスマートコミュニティー分野への投資拡大が見込まれています。わが国の成長戦略の柱であるインフラ・システム輸出を推進するためにもスマートコミュニティー海外展開は最重要分野の一つであり、事業化を見据えて多様な支援を展開していくことが重要と考えています。

セミナー資料 

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