産総研の新機軸−“構成学”を問う
(1)「産業化」を意識
領域またぐ研究に力−“ポスドク”生かす道探る
【“出口”鮮明に】

産総研の拠点、つくばセンター
(茨城県つくば市)

キャラクターは「産総研ありす(左)」
と「産総研てれす」
「ポイントは“出口”を鮮明にする、つまり、より産業化を意識した研究ユニットをつくったこと」。産総研産業技術アーキテクトの肩書を持つ伊藤順司理事は、バイオメディシナル情報研究センターなど6ユニットを立ち上げた4月初めの組織改編の狙いをそう説明する。
01年4月に現在の組織になってから7年。時限組織の設置期間が最長7年であるため、今春が改編・見直しのタイミングだった。この機に、第2期産総研のキーワードとして『産業化』を掲げたといえよう。
出口を鮮明にする一方で、別の方向性も打ち出している。それは「もう一度、基礎(研究)に戻る。とくに“オフロード”と呼ぶ、革新的で、幅広い領域をまたぐテーマに力を入れる」(伊藤理事)というベクトルである。
オフロードの一例としては、エネルギーと電機・情報の接点領域を研究するエネルギー半導体エレクトロニクス研究が挙げられる。情報化と省エネ化。時代のニーズであり必然でもある二つの相矛盾する潮流をどう両立させるか、を突き詰めるものである。
【泥臭く構成的】
今年1月。産総研は新ジャーナル(論文誌)「シンセシオロジー」を創刊した。シンセシオロジーは「構成学」を意味する。同誌で取り上げるのは、基礎研究で得られた成果を社会、産業に生かすための具体的なシナリオや研究手順、要素技術の構成・統合プロセスなど。
それは、産業化およびオフロードとほぼ重なり合う。構成学について、産総研OBである中島秀之公立はこだて未来大学学長は「基礎研究イコール科学に対する工学と言い換えられるのでは。工学は泥臭く、構成的」と解説する。
【横幅広がれば】
同誌創刊には、人にかかわる、ある狙いを持っている。いわゆる博士研究員(ポスドク)対策だ。ポスドクは専門領域の深い知識を持つが、幅の狭さがウイークポイントになりやすい。そのため、企業とミスマッチが生じるなどで、ポスドクが働く場が限定されてしまう現実がある。構成学により、ポスドクの横幅が広がれば、その意義は小さくない。



