産総研の新機軸−“構成学”を問う

(4)産総研副理事長・小野晃氏に聞く

構成学は“第2の科学”−新たな視点で社会に還元

 産業技術総合研究所が掲げる憲章は「社会の中で、社会のために」。“翻訳”すると、知識と技術を創出し社会に還元する―それがミッション、となる。産総研では、同ミッションの実践に向け、今回、シンセシオロジー(構成学)と呼ぶ新たな概念を打ち出したところだ。なぜ、今、構成学なのかを小野晃副理事長に聞いた。(山下 郁雄)

産総研副理事長・小野晃氏

産総研副理事長・小野晃氏

 ―構成学とは、を説明してください。
 「科学を社会に生かすために、要素技術的な科学的知見を、いかに構成していくか。そのシナリオや戦略・ノウハウに関する研究を、構成学と名付けた。これまで、学問や論文の対象にはなりづらかった分野に目を向けるもので、科学の歴史からみても斬新な切り口になると自負している」

 ―科学史的な斬新さとは何でしょうか。
 「従来の科学は事実か否かがポイントとなり、論文の書き方はイット・ウォズ・ディスカバードと、WeやIが入らないスタイル。何を、どのようにのWhatとHow toを記述する形式ともいえる。それに対して、構成学では、WeやIの視点から、なぜなのかのWhyも付加する。“第2の科学”とも呼べるものだと思う」

 ―なぜ今、第2の科学なのか…。
 「17世紀に科学や学会が生まれ、その後、要素還元主義(全体を細かく構成要素に分解し、各要素を突き詰め全体を明らかにするという考え方)が科学の成功を導いた。しかし、環境や食糧の問題が膨らむ現代に至って、その限界が明らかになり、統合や構成の重要性が共通認識として広まっている。そうした流れを踏まえて、構成学を世に問おうというものだ」

 ―新しい論文誌『シンセシオロジー―構成学』に、何を載せていくのですか。
 「研究室の中ではよく議論されていても、これまで外に出ることのなかった研究のプロセス、シナリオ、戦略といったたぐいを、プロジェクトX的(情緒的)ではなく、科学技術の言葉で記述してもらう。対象となるのは、社会的な価値のあるもの、つまり産業や製品に近いもので、必然的に学際の分野となる」

 ―論文は誰が書いて、誰に読ませるのですか。
 「論文執筆者は、当初は産総研の研究者の論文に限定されるが、大学や公的な研究機関の論文を広く載せていきたい。企業の研究者は(ノウハウ漏えいなどから)一定の制約がある」
 「読者については、縦と横で表現すれば、縦方向は科学技術の研究者から研究開発のマネジャーや技術者まで、横方向は科学技術の全分野とそれに関連する人文・社会学の一部までを視野に入れている。幸い、今年1月に出た創刊号は専門知識がなくても読みやすいと好評だ」

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