[ オピニオン ]

社説/16年版通商白書−輸出振興、分析を政策に生かせ

(2016/6/22 05:00)

経済産業省がまとめた2016年版通商白書は、日本の輸出の伸び悩みを指摘した。その中で観光を含めたサービスの輸出に焦点を当てたのは、興味深い着眼点といえる。政府が今後、こうした分析を具体的な政策に生かすことを望む。

日本は「加工貿易立国」を掲げるにもかかわらず、国内総生産(GDP)に占める輸出の割合は20%に満たない。これは40%前後のドイツや韓国に見劣りする。特に近年、先進各国が輸出拡大を通じて経済を伸ばしてきた中で、日本の水準が低いことを白書は問題視した。

中でも日本は観光や専門サービス、運輸、通信などのサービス輸出で後れをとっており、GDPに占める割合は英国やフランスの4分の1しかない。サービス輸出の拡大が今後の課題だという分析は納得できる。

ただ原因や解決策の分析となると、あいまいさが目立つ。例えば先進国が集まる欧州は隣国にサービス輸出しやすい環境にある。これに対して新興国ではサービス貿易に対する制限があり、日本のように周辺が新興国ばかりの地域は不利だという。これは日本の努力だけでは解決できない。

サービス輸出の一種である訪日外国人客の国内での消費について白書は「付加価値のある観光の充実が課題」と指摘した。また高度なITサービスの核となる人材確保では、日本の給与水準の低さや、職場環境に対する外国人労働者の満足度の低さを問題視する。

これらは事業者努力だけではカバーできず、短期的解決も難しい。国家レベルの長期的課題というべきであり、政府部内で横断的にこうした問題意識を持つことが重要だろう。

一方、製造業の輸出について白書は、生産性が高いにもかかわらず輸出への取り組みが十分でない企業が多いことを指摘。自動車など従来型輸出産業が集積する東海甲信地方に寄与度が片寄っているが、北海道の食品製造などにも輸出の可能性があると示唆している。こうした分析が、今後の施策につながることを期待する。

(2016/6/22 05:00)

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