[ オピニオン ]
(2016/8/11 05:00)
「ほら、これを見てよ。針が振れてないだろ? いつものことなんだ。だから、こうして使うのさ」―。米軍の将校はそう言って笑いながら、さびが浮いた旧式のアナログメーターをコンコンとノックしてみせた。
沖縄本島の中央部に横たわる米軍嘉手納基地。正門前の国道の喧噪(けんそう)を感じさせない奥まった一角に、最前線の空軍部隊が展開している。意外なようだが、必ずしも新鋭の装備ではない。その代表格が空中給油機の「KC―135」。
ジェット旅客機時代を切り開いたボーイング707の兄弟機で、配備は1957年。すでに現役60年目だ。コックピットに限らず、操作系統はすべてアナログ仕様。主任務である空中給油は、戦闘機などの燃料口にブーム(給油竿(かん))を目視で差し込む。
「日本では給油の時にコンピューター操作を取り入れているようだけど、我々はすべて手作業だ。難しいが、もう何十年もやってきたことだから問題ないよ」とベテラン操作員は胸を張る。
本国では最新鋭の「KC―46A」への置き換えが始まっている。「いずれカデナにも来るが、いつになるかな」。旧式機の黒ずんだボディーをいたわるようにさする将校の横顔が、どこか町工場のおやじさんに見えた。
(2016/8/11 05:00)