[ オピニオン ]
(2016/8/26 05:00)
機関投資家が、投資先企業の「環境・社会・統治」情報に注目している。決算短信や有価証券報告だけでは見えない、成長の可能性を知る手がかりとしているのだ。日本企業は、情報発信に磨きをかけたい。
企業が問われているのは主に環境問題への取り組み(E)、従業員の人権への配慮(S)、社外取締役の役割(G)だ。これらはまとめて「ESG」と呼ばれ、欧米ではESGで企業を選ぶ投資手法が活発になっている。欧州を中心に活動する民間団体の世界責任投資ネットワーク(GSIA)の資料によると、2014年の世界のESG投資残高は21兆ドル(約2100兆円)。大半が欧米と豪州で、アジアは1%に満たない。
ESG投資の必要性は、リーマン・ショックに端を発した08年の世界経済危機で広く認識された。短期利益を追求した企業が破綻し、損失を抱えた機関投資家がそれまでの考え方を改めたのだ。
好業績の企業の不正が明るみに出たり、鳴り物入りの大型投資が実は環境や従業員問題のリスクを抱えていたりするケースは今後も起きるだろう。財務情報を補い、成長する力を備えているかどうかを見極めるには、ESGが重要となる。
ESG投資が定着すれば、企業は長期的な視点で経営に取り組める。環境問題や社会課題を解決する技術開発に打ち込みやすくなり、それを起点とした新ビジネスを投資家に応援してもらうチャンスも広がる。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は、ESG投資を促す環境をつくってきた。14年2月の日本版スチュワードシップ・コード制定。15年6月のコーポレート・ガバナンス・コード導入。そして15年9月には、世界最大級の機関投資家である年金積立金管理運用独立法人がESG重視を表明している。
肝心なのは企業と投資家との対話である。株価や業績と違って、ESGは客観的・定量的な評価が難しいからだ。企業は対話を重ねながら企業価値を投資家に伝え、成長資金を呼び込んでもらいたい。
(2016/8/26 05:00)
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