[ オピニオン ]
(2016/10/31 05:00)
農業競争力強化と農業者の所得向上のため、肥料や農薬などの価格引き下げが議論されている。それらも重要だが、精度を高めた最新の気象予測・気象情報の活用と、これに関連した民間企業との連携も、もっと検討されるべきではないか。
農業者にとっての悩みは、労力をかけたからといって売価の上昇につながらないことだ。特に悩ましいのが、天候や気温変動による価格の乱高下。キャベツやレタスなどの葉物野菜はこの傾向が著しく、同じ品質の作物でも末端価格で10倍近い開きが生じることもある。
売価だけではない。農業費用の中で大きな割合を占めるのは収穫コストだが、同じ地域で同時期に作物を収穫するため、すぐに人手不足に直面する。人件費が上昇し、農業経営が圧迫される結果となる。
こうした問題に有効と考えられるのが、気象情報の活用である。中長期の気象予測によって収穫や出荷時期をコントロールできれば、作物が不当に安く買いたたかれることを防ぎ、作業補助者を計画的に調達することで人件費を抑制できる。また散布した農薬が直後の降雨で流れ、二重のコストを強いられるような事態も避けられる。
実際に農業者が知りたいのは県別の大まかな天気予報ではなく、民間の気象会社がピンポイントの気象条件を解析して提供するようなきめ細かな情報だ。個人の営農では対価が負担になる恐れがあるが、ある程度の規模以上の法人農業者なら有効な利用が可能だろう。
さらに特定地域の気象情報に頼るだけでなく、作柄や出荷計画を広範囲に共有すれば、より作物の付加価値を高められる。これまで農業者が経験とカンに頼っていた作業を、情報に基づいた合理的なものにする。一部で始まっているが、食品加工会社や小売り流通の需要情報と連携した農業版のビッグデータ利用も広がるだろう。
むろん多品種の上に地域特性の大きい農作物の計画生産は、工業製品ほど簡単ではない。まずは気象情報の活用から経験を積むべきだ。
(2016/10/31 05:00)
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