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【通商弘報(ジェトロ)】「ソーラーパネル道路」目指し歩道に試作品を設置(米国)

(2016/11/18 05:00)

サンフランシスコ発 

2016年11月17日 

  ソーラー・ロードウェイズ(本社:アイダホ州サンドポイント)は、これまでにない機能を多数持つソーラーパネルで注目を集めている。道路や駐車場などに埋め込むパネルで、それを利用した発電システムの開発も行っている。「ソーラーパネル道路」の実現を目指し、同社は10月、歩道にパネルの試作品を初めて設置した。 

<大型トラックが乗っても壊れないパネル>

  ソーラー・ロードウェイズは、電気エンジニアのスコット・ブリューソー社長兼最高経営責任者(CEO)と、その妻であるジュリー・ブリューソー氏によって2006年に設立された。同社のソーラーパネル「SRパネル」は、住宅の屋根上に一般的にみられるような、長方形のアルミ枠にはめられたソーラーパネルとは外観も特性も大きく異なっている。SRパネルは、大きさ4.39平方フィート(約4,078平方センチ)の六角形で、複数のパネルを組み合わせることで、勾配のある場所でも極端な凹凸を生むことなく設置できるように設計されている。

  同社は10月、本社のあるアイダホ州サンドポイントの中心街の歩道の一部に、30枚のSRパネルを設置した。公共の場への試作品の設置は今回が初めて。この設置には6万ドルの費用がかかったといわれるが、AP通信(電子版10月16日)によると、早ければ2017年にも製造工場を設立し、「一般家庭でも手の届く価格で販売できるようにコストダウンを目指す」とジュリー・ブリューソー氏は語っている。今後、メリーランド州ボルチモアとミズーリ州コンウェイの公共の歩道へのSRパネルの設置を予定しているという。

  SRパネルは3つの層から成り、発電セルなどの電子部品が組み付けられた層を、厚さ0.5インチ(約1.27センチ)の特殊な強化ガラスで挟んでいる。そうすることで、SRパネルは最大で25万ポンド(約11.3トン)もの重さに耐えることができる。人間はもちろんのこと、自動車やトレーラーを牽引する大型トラックが走行しても破損しない強度を保つ。また上の層の強化ガラスの表面に凹凸の加工を施し、アスファルトと同等の摩擦力を与え、足やタイヤが滑りにくくする工夫をしている。

  熱にも寒さにも強く、華氏257~マイナス40度(摂氏125~マイナス40度)でも問題なく稼働し、パネル本体の耐久年数は最低でも20年を想定しているという。万が一破損したとしても、破損パネルのみを交換するため、一般的な道路のように一部車線を数時間にわたって閉鎖する必要もない。

  最新版のひとつ前のモデルのSRパネルを駐車場に敷き詰めて行った実証実験では、3,600ワットを発電するソーラー発電設備と同等のエネルギーの生産が確認できた、とされる。

<車線や警告を路面にLEDライト表示>

  SRパネルは発電のためのセルのほかに、LEDライトや発熱体、荷重センサーのほか、コンピュータからの指令を処理するマイクロプロセッサーなどが組み付けられていることも特徴だ。

  LEDライトはカラー表示や点滅表示が可能で、車線や標識、横断歩道などを示すのに利用される。パソコンからの操作で、交通や道路工事の状況によって車線や横断歩道の位置を変えることができるほか、路上の障害物や歩行者の存在、事故の発生、緊急車両の接近などをドライバーに通知し、事故の未然防止に役立てることができる。一般的な道路と違って塗料を使わないため、塗り替えの必要もなく、道路標示の維持や管理にかかる時間やコストの削減も可能だ。また、鹿などの野生動物を荷重センサーが感知し、LEDライトでドライバーに知らせれば、動物との接触事故を減らすこともできる。

 

  発熱体は、表面の温度が氷点下にならない程度にパネルを温め、路上の積雪や凍結を防止する役目を果たす。スリップによる事故を防ぐことができるほか、除雪や融雪剤の散布の手間やコストも削減でき、融雪剤が原因とされる自動車へのダメージも減らすことができるという。発熱体で溶かされた雪や雨水は、パネルの底部に備えられた貯水タンクに貯めることができ、それを処理施設に運搬してリサイクル水として活用することも想定されている。

<クラウドファンディングを利用し227万ドルを調達>

  従来のソーラーパネルにない機能を多数持つSRパネルはこれまで、多くの注目を集めてきた。米国運輸省(DOT)は、中小企業の研究開発を支援する中小企業技術革新研究プログラム(SBIR)を通して、2009年、2011年、2016年と3度にわたって同社に合計で160万ドルの助成金を付与している。また同社は2014年にスタートアップ向けのクラウドファンディングサービス(注)のインディーゴーゴーを利用して、目標額の2倍以上となる227万ドル以上を調達している。2014年に同社が公開した商品紹介の動画も、現在(11月1日時点)再生回数は2,185万回を超え、注目度の高さがうかがえる。

(注)目標達成のために必要な資金などを、インターネットを通じて不特定多数の人々から募るサービス。

(永松康宏、高橋由奈)

(米国) 

(2016/11/18 05:00)

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