[ 政治・経済 ]

不確実性の時代・2017年をどう生きるか(中)経済同友会代表幹事・小林喜光氏

(2017/1/5 05:00)

【経済同友会代表幹事・三菱ケミカルHD会長 小林喜光氏】

―米大統領選でのトランプ氏の勝利や英国のEU(欧州連合)からの離脱。世界は多様性を認めるより分断や他者を排斥する道へ突き進むのでしょうか。

「世界は確かに変わった。しかも『チェンジ』ではなく『リターン』である。自国の利益さえ守れればよい社会になってしまうのか、あるいは自由・民主・平和といった理念を持つ社会を再び志向するのか。本当に時代の転換点にあるのか正直、まだ見極めがつかない。イデオロギーを超えた分断に直面するなか、政治的にこれをどう『最適化』するかが問われる」

「他方、技術革新では時代の転換点にあるのはまぎれもない事実。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新たな技術は人間の脳を『外部化』する知識革命の段階に入った。技術の進展が大きなうねりとなり社会を変える」

―経営者はどんな心構えで激変する世界に向き合うべきですか。

「悲観する必要はないが、極めて不確実性の時代に入った。あまり難しく考えずに(状況変化に)機敏に反応することが問われる。ただ、16年の大いなる教訓として受け止めるべきは、誰かの傘の下や保護の下にいれば安泰な時代は終わったという現実。政治はもとより、経営者も自分の頭で、自分の感覚で将来を見越して成長や安全保障のあり方を考える必要がある」

―企業は、実体経済を必ずしも反映しない株式市場や為替の急変に翻弄(ほんろう)され続けています。

「日銀が金融政策を講じても大きく動かなかった円ドル相場が、米大統領選直後を除けば、かなりの円安基調が続く。日本は国際金融においてリーダーシップを握る難しさを自覚した上で、企業はグローバル展開を一層加速する必要がある」

―社会保障費が膨張する一方、政府は2020年プライマリーバランス(PB)黒字化の旗を降ろしていません。

「どうすれば実現できるのか17年こそ真摯(しんし)に議論すべきだ。安倍晋三政権は(長期安定政権という)政治的アセットをしっかり使ってこれらの課題に向き合うことを期待する」

【記者の目/折り合いつける技量を】

国内外で起こる事象の本質を独特の世界観で表現する小林氏。最近、好んで使う「最適化」という言い回しは「折り合いをつける」と解釈することができる。同時に「自分の頭で考え、自分の感覚で将来を見越せ」との叱咤(しった)は私たち全てに向けられている。

(編集委員・神崎明子)

(2017/1/5 05:00)

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