[ オピニオン ]

社説/テロ国家への輸出管理−汎用品の軍事転用、官民連携で防げ

(2017/2/21 05:00)

未来を切り開く先端技術が痛ましいテロなどに悪用されぬよう、制度の国際調和と官民の情報共有を一段と深めたい。

経済産業省と外務省が共催する「第24回アジア輸出管理セミナー」が21日から3日間、都内で開かれる。東南アジア諸国連合(ASEAN)各国やインド、中国、米国、豪州、欧州など30を超す国・地域、国際機関の180人超が参加する。

東アジアでは北朝鮮による核・ミサイル開発などで安全保障上の脅威が高まっている。また中東では過激派組織「IS」など非国家主体によるテロ活動が広がっている。

こうした懸念のある国・組織の調達活動は年々巧妙化しており、規制側との「いたちごっこ」(経産省幹部)が続く。とりわけ経済成長が続くアジアでは大量破壊兵器などに関連する汎用品の生産能力が向上し、自国生産でなくとも貿易の中継地にされる危険がある。

これを未然に防ぐには安全保障貿易管理の重要性を周知し、国際的な不拡散の取り組みを加速しなければならない。わが国は「外国為替及び外国貿易法(外為法)」に基づいて輸出管理している。軍事転用の恐れがある技術はリスト化され、該当すれば許可が必要となる。

無許可の輸出は、刑事罰としては最大10年以下の懲役、同1000万円以下の罰金だ。同時に企業イメージは損なわれ、株主代表訴訟の懸念もある。

民生品の技術も例外ではない。ゴルフクラブや釣りざおに使う炭素繊維は戦闘機の主翼素材となる。電波送信の増幅器に必要な窒化ガリウム(GaN)は軍用艦船にも転用可能だ。

「IS」の即席爆発装置に日本を含む20か国・50社の製品が発見されたという報告もある。3Dプリンターなど新しい技術が生まれる中、日本製の優れた民生技術をいつ、誰が悪用するか分からない。

企業は従来にも増して、厳密で緩みのない輸出管理が必要だ。大量破壊兵器や生物・化学兵器によるテロを“目前の危機”と考え、国際協調と官民連携による防止を徹底したい。

(2017/2/21 05:00)

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