[ 機械 ]

第59回十大新製品賞/モノづくり賞−三菱重工工作機械 微細レーザ加工機

(2017/2/22 05:00)

  • 開発機を前にする二井谷センター長(中央)ら開発陣

【微細レーザ加工機「ABLASER」】

三菱重工工作機械が開発したのは、レーザーで材料を蒸発させ、直径10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)という微細な穴を開ける装置。光学系の技術と工作機械の制御技術を融合させたことにより、従来のレーザー加工機を超える加工誤差プラスマイナス1マイクロメートルの高い精度が持ち味だ。金属にとどまらず、セラミック、ガラスといった材料にも向く。

ただ、開発に関しては、「切削系の加工機と違い、そもそも教科書など存在しない」(二井谷春彦先端生産システム開発センターセンター長)ところからスタート。そのため、開発陣は、中川清隆氏らが手探りのデータ取りにほぼ3年もの時間を費やし、自らの教科書を作っていった。

加工機には1対2枚のプリズムを計2対4枚内蔵する。高速回転するプリズムにレーザーを通し、照射位置と角度を精密に制御している。複数の回転体を同期、制御するのは至難の業だ。「歯車加工機のワーク(加工対象物)と工具の回転同期のノウハウを生かした」(藤田善仁主席技師)と、主力製品の技術を役立てた。

レーザーによる穴は入り口から出口まで真っすぐにならず、鼓のような形になりやすい。そこで開発途中にプリズムを1対から2対に変更し、この課題を取り除いた。

開発機は経営戦略上、重要な意味を持つ。代名詞の門型加工機や横中ぐりフライス盤といった重厚長大な大型機は、市況悪化と需要の一巡で足踏みが続く。ところが微細加工は今や期待分野だ。例えば、電子デバイスの性能要求の高まりで、組み込まれる半導体がさらに高密度なり、微細加工の需要が増している。直径10マイクロメートルの穴を開ける戦略機は、成長への突破口をも開こうとしている。

(六笠友和、おわり)

【製品プロフィル】

超短パルスレーザーで金属や脆弱(ぜいじゃく)な非金属材料を微細加工する。最小加工径10マイクロメートルは世界最高クラス。4枚のプリズムを高速回転させ、レーザービームの照射位置と角度を精密に制御する。5軸制御により、曲面、複雑形状にも対応する。需要増が予想されるセンサー、自動車や半導体部品、金型部品の生産に有効だとみている。

(2017/2/22 05:00)

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