[ ICT ]

【電子版】佐々木ベジ氏、ソレキア買収戦でがっぷり四つ TOB価格一段上げも

(2017/4/25 11:00)

  • 佐々木 べジ氏(ブルームバーグ)

(ブルームバーグ)電子部品商社のソレキアを巡り、バブル経済期に活躍した異色実業家が再び買収劇の表舞台に立っている。佐々木ベジ氏は、大手情報通信技術(ICT)の富士通との株式公開買い付け(TOB)合戦に一歩も引かない構えで、さらなるTOB価格の引き上げも示唆する。

 佐々木氏はブルームバーグのインタビューで、ソレキア買収で「既に資金として21億円は用意しているが、必要であれば、さらに増やすこともできる」と述べた。会長を務める押出機メーカーのフリージア・マクロスがソレキア株を保有、株価純資産倍率(PBR)は「長年とても低く、業績が悪いにもかかわらず、問題視されていなかった。株主に対する説明もなかった」と言い、大株主の立場で「長く低迷していたソレキアの業績を立て直したい」としている。

 佐々木氏は2月3日にソレキアへのTOB開始を発表、1株2800円で発行済み株式の35.9%に当たる36万4700株を上限とした。ソレキア取締役会は、企業価値の向上は見込めないと同氏提案への反対を表明。3月16日にはソレキアとの取引関係が深い富士通が1株3500円で完全子会社化を目指すTOBに動き、ソレキア取締役会は富士通提案に賛同している。その後双方がTOB価格を引き上げ、直近では佐々木氏が5300円、富士通が5000円だ。ソレキア株の保有比率は直近でFマクロス6.8%、富士通2.7%。

 ソレキアは1958年の創立から富士通の販売代理店を務め、2016年3月期は富士通から約40億円の製品を仕入れ、売上高の約2割となる37億円を富士通関連会社に販売した。同期の営業損益は1億4000万円の赤字、17年3月期は2億2000万円の黒字見込み。ブルームバーグ・データによると、07ー16年のPBRは0.5倍以下だった。

社員自立でPBR1倍以上目指す、株取得は過半数以下

  • ソレキアを巡る買い付け価格の推移(ブルームバーグ)

 佐々木氏は、ソレキア取締役会には富士通から役員が送られ、「富士通に取り込まれてしまっている。社員自ら市場を切り開くという意識を弱くしている」とみる。「830人の社員が自立した気持ちを持てば、すぐに変われる」とし、5年以内のPBR1倍以上の達成に意欲を見せると同時に、買収者に対する社員の懸念を考慮し、過半数の株式取得は目指さない方針だ。

 また同氏は、富士通はソレキアの上場廃止を目指しており、多くの株主は応募しなければ株主価値が事実上なくなるため、最初から1円でも高く買うよう努力すべきだったと主張した。富士通広報IR室の大久保進之介氏はブルームバーグの取材で、ソレキアは「富士通の重要なパートナー、今後も取引関係を維持したい。ビジネス戦略や方針を一体化させたい」とTOBの意義を説明。21日には一層の価格引き上げは合理的限界を超えるとし、現状の5000円を維持すると発表、28日までの買い付け期間を5月10日まで延長した。ソレキア広報はコメントを控えている。

 しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、「日本では会社側の方が強い気がする。単純な経済合理性だけではないことが多い」と指摘。ファイブスター投信投資顧問の大木昌光運用部長は、「ソレキアの株価は本来的な企業価値に比べると、異様に低かったのではないか」とした上で、メーカー系商社に対する市場の人気は低く、割安に放置される傾向が強いため、「大手メーカーはその関係を真剣に考える一つの契機になる」との認識を示した。

青ヶ島から東京へ、自己破産経験も

 佐々木氏は伊豆諸島最南端の東京都青ヶ島の出身で、高校卒業後に秋葉原で電気製品の販売店を開業。他店よりも安く売ったことで電気街から反発を受けながら事業を拡大し、「秋葉原の風雲児」と呼ばれるようになる。「島に電気がなく、電気製品にあこがれがあった。摩擦を起こすのは嫌いではない、摩擦は最大のコミュニケーション手段でもある」と攻めの姿勢で、土地や株の売買にも乗り出した。

 90年代には米化粧品メーカーのエイボン・プロダクツの日本法人に450億円で買収戦を仕掛けたものの撤退、その後自己破産も経験している。91年に経営難に陥った谷藤機械工業(現フリージア・マクロス)の再生に関わって以降、経営破綻企業を次々と買収し、佐々木氏が現在関与する企業数は55社に及ぶ。

 佐々木氏は台湾の投資家と組み、日本での経営陣による自社買収(マネジメント・バイアウト、MBO)を支援するファンドの設立も進めている。台湾では日本企業への関心が高い上、日本の技術をアジアにも広めたいとの考えからだ。立ち上げ時のファンド規模は100億円程度を見込む。大企業の実質的なグループ会社や世襲社長の経営で、リスクテークの意識に欠ける日本企業を変えたいとの思いが強く、今回のソレキア買収は「1つのテストケースとしている面もある。だから、私は勝たなくてはいけない」と語った。

(2017/4/25 11:00)

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