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[ 科学技術・大学 ]
(2017/11/20 05:00)
大強度陽子加速器施設「J―PARC」を擁するJ―PARCセンター(茨城県東海村)は、「中性子」を用いた実験に必要な時間を半減する。透過性が高く、試料内部の観察に適した中性子を発生させる陽子ビームの強度を2018年夏をめどに倍増し、実験時間を大幅に短縮する。ユーザーである企業の新材料や薬の開発をスピードアップできるほか、従来より多くの実験の機会を提供できる。
陽子ビームの強度を少しずつ上げ、温度や振動などを測定し、容器の性能を確認しながら1パルス当たりの陽子ビーム強度600キロワットを目指す。中性子の発生は容器に入れた水銀に陽子ビームを照射して行うため、ビームの強度を上げるには容器の耐久性向上が必要になる。
さらに陽子ビーム強度1000キロワットを目指す取り組みも進める。1000キロワットに向けて、J―PARCの研究グループは容器の溶接部削減のため、材料を局所的に溶かして材料の変形を抑える「電子ビーム溶接」を利用する。熱の膨張や収縮による大きさの変化を3ミリメートル以下に抑えた新容器を18年夏以降に導入する。J―PARCは日本原子力研究開発機構と高エネルギー加速器研究機構が共同運営している。大強度の中性子ビームを試料に照射して、得られた画像を重ねることで動画観察が可能。電池の充放電の様子や、たんぱく質内で化学反応に関わる水素イオンの動きが見られ、電池の開発や創薬などへの貢献が期待できる。
(2017/11/20 05:00)