社説/失業率3.1%に悪化 成長分野への人材流動促せ

(2020/12/2 05:00)

雇用の維持は経済対策の最重要課題である。新型コロナウイルス感染の状況に応じて、機動的な施策を講じてもらいたい。

総務省は1日、労働力調査による10月の完全失業率(季節調整値)が3・1%になったと発表した。前月比0・1ポイントの悪化で、3年5カ月ぶりの水準に上昇した。完全失業者数(同)は214万人で前月比8万人増、非自発的な離職が同4万人増加した。コロナ禍で宿泊業、飲食・サービス業などで就業者数が減少している。

一方、厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率は、前月比0・01ポイント上昇の1・04倍とわずかだが改善した。建設業などかつて人手不足で苦しんだ業種で採用意欲が回復している。

これら二つの指標を見ると、日本の雇用はぎりぎりのところで持ちこたえていると言えよう。ただ、コロナ感染拡大が今後も続けば失業者数の増大が加速する恐れがある。

雇用調整助成金が雇用維持に役割を果たしているのは間違いない。政府は新型コロナの影響を受けた企業を対象に、雇調金の上限額を1万5000円に引き上げる特例措置の期限を2021年2月末まで延長することを決めた。年明け以降の雇用状況を慎重に見極め、必要なら特例措置の再延長も躊躇(ちゅうちょ)なく実行すべきだ。

一部の企業では余剰人員を他企業へ出向させる措置が始まっている。官民が連携してより幅広い企業で円滑に活用されるよう、マッチング機能を強化する必要がある。

一連の対応は、雇用環境が急激に悪化するなかでの緊急措置である。アフターコロナで日本の産業構造にも大きな変化が起こる。中長期的には、縮小する産業から成長産業へと人材を大胆に流動させる必要がある。

デジタル関連、介護・医療関連は今後多くの人材を必要とする分野だが、労働者の新たなスキルの獲得も不可欠となる。政府は人材の移動がスムーズに行えるよう、職業訓練のメニューを今まで以上に多様化させ、同時にマッチング機能も充実してもらいたい。

(2020/12/2 05:00)

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