社説/LNG価格世界で高騰 脱炭素と安定調達に知恵絞れ

(2021/9/28 05:00)

中長期的な液化天然ガス(LNG)価格の上昇に備える覚悟が必要だ。

LNGが世界的に高騰している。短期的要因は、新型コロナ感染症のワクチン接種の普及で経済再開が進み、需要が回復したことや、欧州でLNG在庫が減少した反動でスポット価格高騰を招いていることがある。

中長期的にも上昇が避けられない。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)が世界の潮流となる中、石炭からLNGへの転換が進んでいる。中国の1―6月のLNG輸入量は、日本を上回り世界トップとなった。アジア全体でLNGへの移行が進んでおり、争奪戦が過熱している。

従来なら価格上昇はLNGの新規開発意欲を増大させたが、エネルギー大手は投資の主力を再生可能エネルギーへとシフトしている。供給が細る中で、需要が拡大すれば価格が高騰するのは当然だ。今後も産地で災害や不慮の事態が発生するたびに、供給が脅かされるリスクが避けられない。

日本は年初にもLNG調達の後れから電力供給が逼迫(ひっぱく)する事態が起きた。来冬も同様のリスクが想定され、経済産業省はLNGの在庫や発電余力を把握する対応をとるとしている。

日本は電源構成の37%をLNG火力発電に頼っている。2030年時点で20%に引き下げる案があるものの、主力電源の一つであることは変わらない。

調達地域の多様化や開発段階から参画した権益確保を強化する必要がある。その際に脱炭素の視点が重要になる。当面は植林などで炭素量を相殺するカーボンオフセットによる調達が中心となる。また、三菱重工業が米国でLNG生産段階で排出する二酸化炭素の回収技術を供与する取り組みを始める。こうした回収技術や水素混焼技術はより積極的な脱炭素対策となる。

LNGが脱炭素と両立できれば、投資家の評価も変わり開発投資も回復が期待できる。それが中長期の供給と価格の安定にもつながる。日本はLNGの主要輸入国として、技術で貢献する役割を果たすべきだ。

(2021/9/28 05:00)

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