第34回フレッシャーズ産業論文コンクール2011



テーマ  「中堅・中小企業の将来像を考える」
第一席

優れた研究室から優れた中小企業を考える
仲 友紀恵(なか ゆきえ) 株式会社サティス製薬

 中小企業は研究費の少ない研究室と似ています。
 私が大学時代所属していた研究室は規模も大きく、研究費にも恵まれていました。電気化学を主とするその研究室では所属したての私でも何億円とする装置を使用する事が出来ました。また、研究に行き詰まった際はその研究の最先端を担っている共同研究者に相談できるというこの上ない環境だったのです。しかし私は別の分野も学んでみたいと思い、大学院では植物を扱う研究室に所属する事に決めました。そこは新しく装置を買う費用もないため、私が主に使っていた装置は他の研究室のおさがり、共同研究する企業も少ない分野のため教授が研究費の捻出(ねんしゅつ)に苦悩するような研究室でした。
 ではそのような研究室で私は何も学べなかったのでしょうか。そんなことはありませんでした。むしろ目標を具現化するための頭の使い方を学べたと感じています。資源に限りがある中で、最先端の装置・技術を持つ他研究室にも勝るようなデータを出すには…時には装置を身の回りのもので手作りし代用してみたりして研究を進めました。資源が限られているということは今思えば非常に恵まれた環境だったと思います。例えば古い装置は機能がシンプルなおかげで原理を1から理解でき、トラブルシューティングに強くなれるというメリットがありました。よく「最新の、ボタン一つで全(すべ)ての実験工程を代行してくれる装置ばかり使っている学生は事象の原理を理解できていないために予想外の事象に対処できなくなりやすい」と言われていたのですがまさにその通りだったのです。
 ですから資源面では劣っていても優秀な学生が多く育つ環境でした。人はどのような環境でも実現したい目標があればそこに向かってまい進してゆけるのです。
 中小企業も私の大学院時代の研究室と同様、資源面で厳しい状況である事が多いかと思います。しかし、資源に限りがあるからといって大企業に勝る事業ができないかと言えばそのような事はないでしょう。どのような環境であってもその中にいる人々がどう考え、行動していくかによって企業の将来像は変わっていくのです。企業の場合は研究とは異なり経済活動も意識しなくてはいけないため、社員一人一人が自発的な「経営者」となれるかが重要だと思います。
 社員一人一人が自発的な経営者となるためには、そのような人材が生まれる仕組みの構築が必要です。私の研究室でも先輩方が実験手段を模索し、あらゆる知識を総動員して結論を導き出していました。決して資源が足りないからと言って研究対象を狭めることはしていなかったのです。そのような、先輩の自発的に取り組む姿勢を後輩が受け継いでいた事が資金難の研究室でも優秀な人材が多数輩出されていた要因だったと思います。企業においても、改善のための創意工夫が自発的にできる社員は成果を上げてゆくだけでなく周りによい影響を与え、社内を活性化できるのではないでしょうか。自発的に行動できる「経営者」を生み出す仕組み作りはまず、会社が何を目指す目標を明示し社員に深く理解してもらう事から始まると思います。そしてその目標を目指し行動を起こす事の楽しさを知れば自発的に行動する社員は増えるのではないでしょうか。研究者も新しい知見を得るという目標があり、目標達成への過程で創意工夫をする楽しさ、達成した際の充実感を得るために日々研究を行っています。企業でも、社会貢献をするという目標のためにどのような手段をとるか考える事、そして目標を達成した時に社会にどのように好影響を与えるか考えられる社員で構成された会社はすさまじい発展を遂げるのではないでしょうか。
 中小企業において今以上の発展と長期に渡(わた)る存続を望むのであれば、他にはない強い個性を持つこと、さらにその個性を社員全員がしっかりと認識している事が必要だと考えます。何かひとつでも他に負けない個性を見つける、そのセンスとスピードが大切です。そのために必要なのは会社の規模ではなく、その中で働く人々が目的意識と軽いフットワークを持つことです。「山椒(さんしょう)は小粒でもぴりりと辛い」と言いますが、社員一人一人がぴりりと辛い山椒となって目標を見据えた行動を起こし着実に歩みを進める事が必要です。その結果、企業も社会の中でぴりりと辛い、強い個性を持った山椒となるのではないでしょうか。中小企業は資金、人材共に苦労の多い環境のように思えますが社員の自発的行動と、その姿勢の仕組化を行えば大企業よりもスピード感のある、エキサイティングな企業に生まれ変われます。中小企業という言葉の壁を破り、大企業を脅かすような技術を持った会社がこれからは多く現れることを予想すると共に、自身も山椒となって会社の発展に貢献してゆきたいと思います。




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