第34回フレッシャーズ産業論文コンクール2011



テーマ  「中堅・中小企業の将来像を考える」
第一席

中小企業の海外進出について
柳田 祥子(やなぎだ しょうこ) 千代田三菱電機機器販売株式会社

 日本の中小企業はそれぞれが特徴的な技術を保有していることが多い。それを有効的に活用し、円高や少子化によって縮小傾向にある日本国内の現状からいかに海外市場に展開出来るかが企業の成功の鍵ではないかと考える。
 国内の中小企業が海外に進出するために必要なのは、技術力を生かす先を市場から見つけることだろう。技術と市場のニーズをマッチングさせるために、細かな市場調査やニーズの掘り起こしが必要だ。そのために、まずは語学力を持つ人材を採用する事が重要だと考える。語学力を有する学生を、技術力を持つ中小企業とマッチングさせる事で、中小企業の海外進出の第一歩となると同時に、大企業に人気が集中しがちな現代の就職状況も変化するのではないだろうか。

 昨今の国内市場は、円高や少子高齢化などによる規模縮小により、国内企業を取り巻く環境はますます厳しさを増している。特に東京電力と東北電力管内の一都十五県は、経済産業省から打ち出された前年比15パーセント削減という節電目標がある。このハードルの高い目標を企業が課せられる中、いかに国内での生産性を保つかが企業にとって大きな課題の一つである。投資意欲や競争力を持つ企業ほど電力不足の影響は大きく、海外流出に転じる企業も多いだろう。
 日本の企業は、それぞれが特徴的な事業や技術を保有していることが多い。特に中小企業においては顕著である。それを有効的に活用して、縮小傾向にある日本国内の市場からいかに海外市場に展開できるかが企業の成功の鍵ではないかと私は考える。中小企業だからこそ、大手企業や中堅企業が手を出さないニッチ市場の販路開拓が可能だと考えられるからだ。
 例えば、世界中でシェアを拡大し続けているiPodのボディ背面にある滑らかな鏡面は、日本の研磨職人が一つ一つ手を込めて磨いたものであった。新潟県燕市の従業員わずか5名の小林研業である。世界的メーカーの厳しい目を一地方の職人たちの技術と経験、そして知恵で納得させたのだ。また、小林研業をきっかけに衰退しつつあった燕市の研磨職人が集まり「磨き屋シンジケート」を結成し、今も工業部品の大口の受注を受けたり、高品質なオリジナルブランドの製品を製作したりと活躍している。
 また、ハードロック工業株式会社は、独自の技術開発力で「絶対にゆるまないネジ」を発明し、日本の新幹線やイギリスやドイツ、台湾の高速鉄道、東京スカイツリーなどの高層建築物でも使用されている。類似品も多数出てきたそうだが、本物の品質には到底及ばないと言う。社長自ら「誰にも真似出来ない技術」を掲げ、日々技術向上に努めている。
 例に挙げた小林研業やハードロック工業のように、小規模ながら様々な工業製品の要となる製品を製造する企業は国内に多く点在している。また、様々な業界のキーパーツを技術的に独占し、且つ世界を股にかけたサプライチェーンとしての要所を担っている企業も多く存在する。規模が小さいからこそ、小回りが利いて動けるため、ダイレクトに海外に売り込めれば、技術力によって世界市場を独占することも可能だろう。しかし、技術の向上だけを掲げていては、価格面での国際競争において勝つことは出来ないのが現状である。かつて小林研業が行っていたiPodの背面の鏡面加工は、現在アジアにある他社工場で行われている。このように、いずれ人海戦術と一定の品質を確保したアジアの安い労働力に受注を奪われ、最終的に技術流出という結果だけが残りかねない。また、グローバル化が進み、他国のどの会社でも日本の技術力を利用する事が可能になった今、ただ品質のみを提供するのでは、海外に利益の大半を持って行かれてしまうだろう。
 国内の中小企業が海外に進出するために必要なのは、技術力を生かす先を市場から見つけることだろう。アジア各国で安価の大量生産が実現している今、手間を惜しまずにより良いものを作る日本の中小企業にしか出来ない事が必ずあるはずだ。例に挙げた小林研業やハードロック工業のように、日本の高い技術力はすでに海外からは一目置かれる存在である。大量生産出来ない高度な技術を要求されるもの、代替品の無いオンリーワンの技術や品物を作ることが出来れば、日本メーカーの品質への信用を活かし市場を拡大することも可能だろう。技術と市場のニーズをマッチングさせるためには、細かな市場調査やニーズの掘り起こしが必要であると考える。また、国内だけでなく、海外の展示会等に企業自ら積極的に参加することも重要だろう。
 そのために、まずは語学力を持つ人材を採用する事が重要だと考える。現在の就職活動の傾向は、安定志向から未だ大手企業に人気が集中しがちである。語学力を有する学生を、技術力を持つ中小企業とマッチングさせる事で、中小企業の海外進出の第一歩となると同時に、就職難の状況も変化するのではないだろうか。英語でのHPの作成、海外の展示会の提案など、やりがいのある仕事が多いだろう。日本のモノづくりを通して世界経済との結びつきを強めるためには、中小企業の存在はなくてはならない。規模の小さい会社だからこそ、社員全員の志が同じ方向を向けば、鋭い勢力として世界市場に切り込めるのではないだろうか。


【参考文献】
『iPod』を支えた日本の職人技 小林研業のワザに日本浮揚のヒントを探る(1)
 http://xbrand.yahoo.co.jp/category/business_money/2293/1.html




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