産学官をつなぐ−モノづくり連携大賞受賞例から(2)

横転防止技術開発へ−日刊工業新聞社賞:東京海洋大・神戸グループ

【被災経験を基に】
 コンテナトラックの横転防止技術の開発には、まずトラックを横転させる実証試験が不可欠―。「日刊工業新聞社賞」を受賞した東京海洋大学と神戸の運輸・港湾関係団体グループは、プロジェクト開始からわずか4カ月でこの危険な試験を実施した。
  関係者も初めて目にする転倒シーンは、テレビでも放映され話題になった。関係団体の複雑な利害関係や行政の規制を越えてこんな試験ができるのは、阪神大震災の経験があり、格段に高い安全安心意識を持つ神戸しかない―。受賞者らはそう自負している。コンテナトラック横転の実証試験
 開封できない輸入コンテナの混載トラックは、法定制限速度内でもカーブで横転する事故が多発している。神戸港側と情報交換する東京海洋大渡邉豊教授らがこの課題に取り組めたのは、04年に科学技術振興機構(JST)の社会技術システムの公募型プログラムに採択されたのがきっかけだ。試験後に理論式を解き、トラックの重心をセンサーで測定、確実に安全な制限速度を割り出すシステムを開発した。

【17機関が加盟】
 港ではさまざまな組織と人が動いている。プロジェクトの一員である「よみがえれ神戸港推進委員会」には倉庫、荷役、船舶の協会や労働団体など17機関が加盟する。兵庫県トラック協会海上コンテナ部会がリーダーとなり「『特許権者におれも入れろ』などと欲がぶつかり合う形にならなかった」(田原徹典副部会長)という。
  試験は運転手の大けがや火災が心配され、消防、警察、税関など行政機関の了解も得られにくい。しかし、震災経験から「安全は何事にも代え難い」との思いは共通で、神戸市みなと総局を事務局に話はスピーディーに進んだ。

【直線走行で感知】
 研究会で渡邉教授が静止トラックを傾ける重心測定を提案すると、「それでは手間がかかり無理」との指摘が即座に返ってきた。結局、30秒の直線走行でセンサー感知できる仕組みにした。「現場が絶えずそばにいることは大きい」と渡邉教授は回り道を回避できたメリットを強調する。
  今回の成果は、現場ニーズに応える産学連携以上のものだ、と東京海洋大社会連携推進共同研究センターは見ている。「移動体の危険性防止技術という新たなシーズから、車両横転とは違った応用成果を近々出したい」と中村宏同センター准教授は新たな策を練っている。
 (編集委員・山本佳世子)

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