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大阪大学、杉花粉アレルゲンに対して高い除去能を示す水酸化フラーレンの合成に成功

国立大学法人 大阪大学

2010.3.12

杉花粉アレルゲンに対して高い除去能を示す水酸化フラーレンの合成に成功 NEDO の産業技術研究助成事業の一環として、大阪大学大学院工学研究科 応用化 学専攻の 小久保研講師は、安価な過酸化水素水を用いて一段階で簡便に水溶性水酸化フ ラーレン(注1)を合 成できる画期的な方法を開発し、塩素のようなハロゲン基を水酸基と共存させた 誘導体の合成に 成功しました。この誘導体は杉花粉アレルゲン(Cry j 1)に対して高い除去能 (5 分で94.5%)を持つ ことが明らかになりました。また、水酸基数の少ない(10〜14 個程度)非水溶 性水酸化フラーレンの 合成にも成功しており、用途に応じて溶解度を制御できます。この方法により合 成された水溶性フ ラーレンは研磨スラリーのほか、カテキンに匹敵する抗菌活性、脂質ラジカル種 に対する抗酸化活 性も見出されており、化粧品添加剤やホームケアプロダクトなどへの実用化にも 期待がもたれる技 術です。
この成果は、日本化学会第90 春季年会(3 月27 日)にて発表されます。

(注1) フラーレン(Fullerene)とは、1985 年に発見された球状のナノカーボン であり、球面を覆っているπ電子に由来す る特異的な分光学的・電気化学的特性により、有機n 型半導体として有機薄膜太 陽電池などへの応用が期待さ れています。現在は、ゴルフクラブやバトミントンラケットのシャフト強度向上 剤としてや、機能性化粧品成分とし て実用化されています。

1. 背景及び研究概要
現在、高い研磨精度が要求される半導体研磨などの研磨スラリーとして、シリカ やセリアが主流となっ ていますが、粒径数nm 以下で均一な粒径分布を持つ砥粒の開発が望まれていま す。その候補として、 直径およそ1nm の球状炭素分子フラーレンが注目を集めましたが、従来手法の 合成では水溶性に乏し いことや、精製が困難なナトリウム塩のような不純物が残留して研磨精度が不十 分なことが課題でした。 そこで、大阪大学大学院工学研究科では、フラーレンの炭素骨格表面に多数の水 酸基(平均36.44 個程度)を導入することで、水溶性を大きく改善した水溶性水酸化フラーレン を、過酸化水素水を用いて 一段階で簡便に合成する画期的な方法を開発しました。今回、この新しい手法を 用いて、塩素のような ハロゲン基を水酸基と共存させたタイプの誘導体の合成に成功しました。この誘 導体は、杉花粉アレル ゲン(Cry j 1)に対して高い除去能(5 分で94.5%)を示すことが見出されて います。また、水酸基数の少 ない(10〜14 個程度)非水溶性水酸化フラーレン(有機溶媒タイプ)の合成に も成功しています。 水溶性を大きく改善した水溶性水酸化フラーレンは、水酸化ナトリウムを用いる 従来品と比べて鮮や かな淡黄色を有する粉末状固体で、不純物となるナトリウム塩を一切含まず、中 性条件下での高い水溶 化(〜65 mg/mL)が可能です。この粒子は水中で凝集せず、分子サイズとほぼ等 しいおよそ1ナノメート ルの非常に狭い粒径分布を示します。銅ウエハのCMP(注2)研磨スラリーの主成 分として行った実験室レ ベルの研磨試験では、二乗平均表面粗さ(RMS) = 1 nm 以下の高い研磨精度を 示しました。また、ポリ フェノールのように多数の水酸基やπ共役を有する構造をしており、杉花粉アレ ルゲン除去能、カテキン に匹敵する抗菌活性、脂質ラジカルへの抗酸化活性などが見られたことから、高 い研磨精度が要求さ れる半導体向け研磨スラリー用途の外にも、化粧品添加剤やホームケアプロダク トなどの分野への応 用も期待されます。
(注2) CMP とはChemical Mechanical Polishing の頭文字を取ったもので、化 学的機械研磨のこと。


2. 競合技術への強み
この技術には、次のような強みがあります。
(1)高研磨精度
銅ウエハ(25μm2)のCMP 研磨スラリーの実験で二乗平均表面粗さ(RMS) = 最 高0.37 nm を達成。 市販研磨スラリーでの粗さ1.65 nm(400μm2 比較実験値)に対して、約1/5 の表 面粗さ精度を実 現。
(2)中性条件下でも優れた水溶性
水中においておよそ1ナノメートルの球状炭素粒子として単分子分散(〜65 mg/mL)。
(3)幅広い応用
杉花粉アレルゲン(Cry j 1)除去能(5 分で94.5%)が認められるほか、カテ キンに匹敵する抗菌活 性(MRSA、皮膚ブドウ球菌、アクネ菌、カンジダ等)、脂質ラジカルに対する抗 酸化活性もあり、幅 広い応用に期待がもたれます。

3. 今後の展望
今後、大阪大学では、簡便合成法により得た各種水酸化フラーレン誘導体の実用 化展開を目指しま す。具体的には、用途に応じたスクリーニングおよび分子修飾チューニング、製 品規格や合成法の最適 化、スケールアップ合成におけるさらなるコストダウン、生体安全性・生態毒性 試験等の実施を、本技術 に興味を持つ企業・組織に提案し、意見交換や技術相談、共同研究を通じて進め て行きます。

4. 研究者(小久保研講師)の略歴
1994 年 大阪大学工学部応用化学科卒業
1996 年 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻博士前期課程修了
1998 年 大阪大学大学院工学研究科分子化学専攻博士後期課程修了
1998 年 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻大島研究室・助手
2007 年〜 大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻大島研究室・講師 (兼任)
2008 年〜2009 年 米国マサチューセッツ大学客員准教授 (受賞)
2009 年度精密工学会沼田記念論文賞 (2010.3.17 予定)
「水酸化フラーレンスラリーを用いたCu-CMP 加工法に関する研究―研磨特性の検 証―」
(精密工学会誌75 巻4 号 田近英之、高谷裕浩、林照剛、田名田祐樹、小久保 研、鈴木恵友 共著)
 

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