第6回モノづくり連携大賞

第3回 受賞一覧(「産学官をつなぐ モノづくり連携大賞受賞例から」新聞連載より)

(1)モノづくり連携大賞―九州大学グループ

「グローバル視点」輝く 人材ネットワークで実現

開発した超小型中継・基地局
開発した超小型中継・基地局
製品概要

「大学発ベンチャーが事業化を成功するポイントの一つはいかにグローバルな視点を持ち、業務実績のある経営人材をどのように確保するかだ」というのは九州大学知的財産本部起業支援グループリーダーの坂本剛特任准教授。
一般的にベンチャー起業などの事業化プロジェクトは人材確保で苦労する。大賞を受賞した「九州大学のネットワークを活用した『置けば無線LANエリア!手乗りメッシュアクセスポイント』の事業化」はまさに九大のベンチャー支援組織「綾水会」や社会人大学院生が多いビジネススクールなどの人材ネットワークを活用して実現。
さらに無線LAN通信エリアを多段的に拡大する超小型中継・基地局の技術を1年という短期間で事業化にめどをつけた。
その核となる技術は周期的間欠送信技術。従来は難しかった10段以上の多段中継を可能にした。複雑な配線が不要の超小型中継・基地局を“置く”だけでローカル・アクセス・エリアを拡張でき、ネットワーク市場での活躍が期待できる。


(2)日刊工業新聞社賞―電気通信大学グループ

「手振れ補正技術支援 デジカメで標準化狙う」

手ブレ計測・評価専用に開発したLEDディスプレイ
手ブレ計測・評価専用に開発した
LEDディスプレー
製品概要

デジデジタルカメラの手ぶれ補正の評価システムは、カメラメーカーが開発競争を繰り広げながら、数値で把握できずにいた手ぶれ補正技術を支援する。展示会で反応が高かったため、電気通信大学知的財産本部などはソフトウエア契約という特殊な技術移転を思案し、ひと月しないうちに資料を各社に送付した。
通常、大学の発明は製品開発に2、3年かかるが、今回の技術は最終製品に組み込まれるものではない。そのため技術の完成度をさらに高める前に、早期に提供すべきだと判断した。ここでは電機業界出身のメンバーの勘が役立った。同時に電機業界と同様のコンソーシアムでは反目して無理と知り、発明者である西一樹准教授のサポート付きの個別対応に切り替えた。
今後、業界の標準化技術にと期待するが、他社と技術比較ができる点に難色を示すメーカーもあって簡単ではない。一方で同技術を、品質管理のため製造ラインで導入したいとの声も、2社から寄せられている。特定業界の研究開発支援というニッチ技術が、どう広がるか楽しみなところだ。


(3)新技術開発賞―くまもとテクノ産業財団グループ

「耐熱マグネ合金研究 サンプル提供開始」

開発した合金による中型押出加工材
開発した合金による
中型押出加工材
製品概要

くまもとテクノ産業財団グループの「産学官連携による次世代耐熱マグネシウム合金基盤技術開発」には現在、熊本大学など7大学、15社、2公的機関が研究開発に取り組んでいる。
12月中にはサンプル提供を開始。サンプルを希望している企業は自動車関連メーカーなど数十社にのぼる。ただし、サンプル提供は共同研究の実施が条件。「相手は慎重に選びたい」(瀬戸英昭産学官連携コーディネーター)としており、サンプル提供先は厳選する考えだ。
サンプルの各提供先からは温度別の強度や生産コスト、加工コストなど事業化に必要なさまざまな課題が寄せられる見込み。その後は、それら課題を解決する研究開発テーマが多く生まれると予想される。自動車部品に採用される場合、部品を使うユニット全体の設計や量産体制から見直すことが必要になる。自動車に限らず実用化の時期は「早くても2、3年先」(同)と見込む。
くまもとテクノ産業財団グループは今後、鋳造の大型化と量産化へ向けた研究開発に乗り出す。


(4)中小企業部門賞―福井県工業技術センターグループ

「横方向変形など研究 繊維素材・寝具で商品化」

開発した多層構造織物の断面
開発した多層構造織物の断面
製品概要

公設試験研究機関は地域経済に密着し、産業や技術などさまざまな情報が集まる。企業経営者や大学研究者についても、顔なじみが多い。「これが公設試の強み。人や技術を結ぶコーディネート活動はかくれた特技だ」。福井県工業技術センターの笠嶋文夫所長は強調する。
中小企業部門賞を受賞した「繊維王国福井の人・技術連携でヒット商品を創出した多層構造織物技術の開発」には、同センターのネットワークが生かされた。永平寺サイジング(福井県永平寺町、河合均社長)とは製品の評価試験段階で出会い、横方向への変形など課題を探る共同研究に着手。糸の断面を扁平にする新素材開発では、同センターが福井大学との共同研究を橋渡しした。
モノづくりは一朝一夕とはいかず、時間がかかる。このため「製品化までの役割分担をきっちり決めた」(笠嶋所長)。これが各者の参画意識を高め、連携が円滑に進んだ。現在、寝具製造販売会社が床ずれ防止のベッドパッドとして販売。今後はヘルメットなど安全用具の衝撃吸収材の用途も狙っている。


(5)特別賞―リナシメタリグループ

「金属微細化で強度向上 車・航空機向け加工技術」

ステンレスの微細化処理前(上)と処理後(下)の組織の顕微鏡写真
ステンレスの微細化処理前(上)と処理後(下)の組織の顕微鏡写真
製品概要

リナシメタリ(福岡市中央区、中村克昭社長、092・762・8592)の技術は金属結晶微細化技術。結晶粒微細化技術「CREO」と塑性加工技術「ALBA」から成る。金属を微細化することで強度向上が図れ、材料の使用量も削減できる。原材料高に苦しむ自動車や電機、航空機産業などに加工技術を売り込んでいる。
金属結晶は微細化すると同一成分であっても強度や耐食・成形性が1・5―2倍向上する。古くからさまざまな微細化プロセスが試されてきたが、高コスト、金型寿命が短いなど課題も多く、量産化にいたらなかった。
同社技術は材料を加熱し、連続してせん断、ひずみを与えることで結晶を微細化する。単純なプロセスのため大がかりな設備が不要で生産量に応じた設備投資が図れる。強度向上のための添加元素も不要。現在は100メートル以上の長尺連続処理が可能な装置開発も進めている。処理速度も「分速10メートルと、従来比20倍以上高速化が図れる」(中村社長)。
九州大学や九州工業大学なども参加した産学連携の成功事例として地域でも注目されている。


(6)特別賞―富山工業高等専門学校グループ

「フッ素化合物 不用化 廃石こう向け特殊粉末」

リン酸カルシウム系フッ素不溶化剤
虫歯予防技術をヒントに開発したリン酸カルシウム系フッ素不溶化剤
製品概要

03年に「土壌汚染対策法」が制定され、国内でも環境に対して厳しい目が向けられるようになった。そうした中、富山工業高等専門学校の袋布昌幹准教授はフッ素化合物が歯や骨に沈着する点に着目。人工骨に用いる機能性材料開発の経験と虫歯予防の技術をヒントに、環境中のフッ素化合物の不溶化を実現する処理技術の研究を始めた。04年からは石こうボードメーカーのチヨダウーテと共同研究を開始。07年には大林道路もこの研究に加わった。
「全国の高専卒業生のネットワークを生かしたことで研究はスムーズに進行」(袋布准教授)。その結果、「リン酸カルシウム」をベースとした特殊粉末の開発に成功。この粉末を廃石こうや建設汚泥に混ぜることで、有害物質とされるフッ素化合物が溶出することを抑えることができる。
現在、廃石こうボードは年間150万トン、建設汚泥は同800万トン発生している。この処理市場を狙い、2010年中には特殊粉末を製品化し発売する予定。産業廃棄物処理業者向けに年間30億円の売り上げを見込む。


(7)特別賞―マグナビートグループ

「磁性ナノ粒子製品化 研究所向け受注増加」

開発した熱応答性磁性ナノ粒子「サーマ・マックス」
開発した熱応答性磁性ナノ粒子「サーマ・マックス」
製品概要

マグナビートは国立大学が民間企業に出資して設立した産学ジョイントベンチャー(JV)。05年7月にチッソと神戸大学が共同で設立した。国立大学が民間企業に出資することは規制されている。そこで、神戸大工学部の近藤昭彦教授がもつ熱応答性磁性ナノ粒子についての独占的特許実施権を得る対価として、マグナビートの発行済み株式総数の5%に相当する株式を神戸大に「寄付」する形をとった。
熱応答性磁性ナノ粒子は温度変化で凝集・分散する約100ナノメートル(ナノは10億分の1)の磁性ビーズ。わずかな温度変化で磁気分離でき、タンパク質や抗体などの高感度、高速精製が可能となる。00年にチッソと近藤教授とで熱応答磁性ナノ粒子についての共同研究をスタート。同年に素材は完成したが、同一品質の粒子を製造するのに苦戦し、検査キットの製品化は06年4月となった。発売後は研究所向けを中心に受注が増え、売上高は2期連続で30%増を達成している。
マグナビートの大西徳幸社長は「大学の

発明を企業が実用化し、その利益を大学へ還元する好循環が生まれれば」と産学JVの未来を語る。


(8)特別賞―産業技術総合研究所グループ

「光伝送技術確立にめど 国際規格提案へ準備」

開発した光バックプレーンシステム
開発した光バックプレーンシステム
製品概要

大容量の動画や高精細な画像などを送受信する次世代ネットワークで、光部品同士をつなぐ配線の役割を果たす「光インターコネクション」は将来の必須技術になる。光ファイバーや光素子、光実装部品や光電気モジュールなど多くの要素技術が必要な分野で、産学官の技術力がいかんなく発揮された開発成果だ。
国家プロジェクトの成果などを活用し、1メートル以内の短距離で伝送できる小型で低価格の光インターコネクション技術の確立にめどをつけた。産業技術総合研究所内に研究拠点を設け、連携企業11社の人材を集約。開発費は各社が均等に拠出し、さらに産総研が企業の出資金合計に相当する額を支援した。当初2年だった研究を4年に延長し、実用水準まで近づけた。
種々の要素技術を統合して開発した光バックプレーンシステムは、業界団体JPCAに採用され、業界規格となった。現在は国際規格の提案へ準備を進めている。産総研の青柳昌宏主幹研究員は「技術はほぼできあがった。これをシステムに組み込んでいきたい」と話し、普及活動を進める考えだ。


(9)特別賞―AREC・上田市

「地元企業と大学仲介 育成施設で成果創出」

リレー講演会に合わせて行われる技術や製品を紹介する展示会
リレー講演会に合わせて行われる技術や製品を紹介する展示会
製品概要

長野県上田市の産学官連携支援施設「AREC(エーレック)」は、行政の助成金に頼って産学官連携事業を行う「ハコモノ」施設と一線を画する。02年に完成した活動拠点のARECプラザ建設費以外は会員企業の会費とインキュベーション施設の賃料で運営し、産学官連携成果を数多く創出しているからだ。
特別賞の対象となった「地方中小都市における自助独立型のモノづくり中小企業支援」は、ARECが立地する信州大学繊維学部など大学の研究シーズと地元企業のニーズをマッチングさせることが主な狙い。大学や企業など最新の研究成果を紹介するリレー講演会は09年5月に通算100回を超える予定。講演会後の交流会では連携の輪がさらに広がっている。
00年のAREC設立時に36社だった会員企業は12月1日現在、182社まで増えた。18室のインキュベーション施設は満室状態という。ARECの成功により地元企業に関心を持つ大学生が増えており、ARECが「企業にマーケティングのアドバイスを行う学生を仲介する」(岡田基幸事務局長)といった新たな取り組みも始めている。


(10)特別賞―伊藤工作所グループ

「乳牛の排せつ処理軽減 過程での充電が可能」

ダングクリーナー
手押しで排泄物を処理できる
「ダングクリーナー」
製品概要

牛舎の清掃は乳牛の健康維持にとても重要。伊藤工作所(岩手県花巻市、伊藤金昭社長)グループが開発した「ダングクリーナー」は、やっかいな乳牛の排せつ物処理を手押しするだけで行うことができ、清掃の負担を軽減する。電動の回転ブラシが、排せつ物を流す溝にこびりついた牛ふんをはがし落とす。手作業だと1日約2時間もかかる作業を約15分に短縮。バッテリー式で、家庭での充電が可能だ。
アイデアがひらめいたのは伊藤工作所の伊藤達也氏。「義父が経営する牧場で牛舎清掃の過酷さを知った」(伊藤氏)のがきっかけ。岩手県工業技術センターの園田哲也研究員と連携して基本構造を設計、拓殖大学工学部工業デザイン学科の菊池司助教の協力を得て、外装をデザインした。
連携成功の要因はチームワークの良さ。伊藤氏と園田研究員、菊池助教の3人は71年生まれで高校の同級生だ。「心の支えがあった。若者が力を合わせて取り組む姿に周囲の人も協力的だった」(同)という。
ローテクながら不満解決型の製品に、モニターテストに参加した酪農家は大喜び。今後は全国に拡販する考えだ。


(11)特別賞―金沢工業高等専門学校グループ

「“将来の工場長”育成 技術者招き直接指導」

技術者を講師に授業
技術者を講師に授業
製品概要

金沢工業高等専門学校は、モノづくりの現場で中核になれる人材「将来の工場長」を育成する教育プログラムを開発した。07年10月から同校機械工学科の全学年の授業に取り入れている。
同校が目指す将来の工場長とは、知識や技能だけでなく、人とのコミュニケーション能力を身につけた若者だ。こうした人材の育成には社会人の活用が有効と判断し、地元企業などと連携した。
プログラムの目玉は、連携した企業の技術者を講師として招き、直接学生を指導してもらうことだ。このため、授業に使用するテキストも技術者の意見を取り入れて、新たに作成した。
学生が指導を受けられるのは多くて週1回。それでも“プロの技術者”と触れ合うことで「素直に人の話を聞くようになったほか、課題の提出期限を守るなど授業に臨む態度が変わった」(同校関係者)と目を細める。
当初は、企業など18社5団体と連携を組んでスタートした。今では、同校OBも講師陣に加わり「連携するチャンネルをもっと増やしたい」(同)と意気込んでいる。


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