[ オピニオン ]
(2015/11/24 05:00)
日本経済の減速が鮮明になっている。2015年7―9月期の実質国内総生産(GDP)は年率マイナス0・8%と2四半期連続のマイナス成長。15年度の実質成長率は政府見通しのプラス1・5%を下回り、1%台を割り込むとの民間予測が少なくない。
これは中国や新興国経済の減速だけが理由ではない。賃上げが進んだ割には個人消費の回復力が鈍く、業績は総じて堅調なのに企業の設備投資が停滞している。こうした内需不振は政府にとって誤算だった。本来なら賃上げが消費を促し、企業の増産と収益増が設備投資ともう一段の賃上げを促す”経済の好循環“が回るはずだった。しかし現実には家計は貯蓄を、企業は内部留保を増やした。
GDP統計によると、7―9月期の雇用者報酬は前期比0・8%増。これに対して個人消費は同0・5%増にとどまった。景気の先行き不安に加え、非正規雇用が労働者全体の4割を占めるまで増えた影響もあるとみられる。今後の賃金上昇への疑念が財布の紐(ひも)を堅くしている。金融緩和によるインフレ効果にも限界がみえる。
一方、企業の設備投資が同1・3%減となった背景には、国内販売の伸び悩みがある。円安に伴う営業外収益のかさ上げなどで経常利益は大幅に増えたものの、長期的にも国内市場は人口減による先細りが確実。これに世界経済の下振れ懸念が加わり、投資に慎重姿勢を示したと考えられる。
貯蓄や内部留保などの”動かないマネー“をいかに循環させるかは依然、日本経済の大きな課題である。非正規労働者の処遇改善や正社員化、若者や現役世代に配慮した税制・社会保障制度改革を通じ、家計の可処分所得を増やす必要がある。加えてイノベーションや新産業創出、対日投資を促す規制改革、さらに少子化対策を推し進めて内需を刺激し、積極的な設備投資につなげたい。
その意味で、当面の景気後退リスク回避を目的とした15年度補正予算だけでは不十分だ。2四半期連続のマイナス成長でみえてきた構造問題を解消しない限り、GDP600兆円の目標達成は遠い。
(2015/11/24 05:00)