[ オピニオン ]
(2016/3/4 05:00)
中小企業にとって身近な存在である税理士らを、経営支援に活用する「認定支援機関制度」が曲がり角にある。2012年の創設以来、認定数は2万4000件超になった。今後は数を増やすより、個々の力量を明確化すべきだ。実績を基にして真に中小企業の力になれる機関を育て、メリハリをつけた制度として運用していくことが望ましい。
この制度は民主党政権が中小政策の目玉として打ち出したもの。認定支援機関の8割近くを税理士と税理士法人が占める。ただ当初から、税理士に専門外の資金繰りや経営改善計画策定の支援ができるのかという疑問の声があった。
中小に対しては商工会議所や自治体の支援機関がある。そこに追加して新たな認定制度を設ける理由を、当時の中小企業庁は「中小の経営課題が多様化する中で、支援側にも専門性が求められる」と説明した。
制度導入から4年あまり。同庁は2月末、認定支援機関に関する初の実態調査を公表した。だが内容は支援機関側の「自己評価」にとどまっており、制度が役だったかどうかの判定は難しい。実際には税務処理以外の指導力を獲得しようと努力している税理士は少数で、多くは金融機関と互角に渡り合えるほどの力量を身につけていないと言われる。
真に中小に役立つ支援機関の例としては、東京都板橋区がリーマン・ショック直後の09年に発足した「経営改善チーム」がある。”板橋モデル“として全国に知られるこの支援スタイルは、昼夜問わず相談を受け付け、とことん経営立て直しに付き合うもの。相談内容に合わせて適切な専門家につなぎ、金融機関との面談にも同行するきめ細かさだ。
チームを率いる板橋区立企業活性化センター長の中嶋修さんは「専門性や資格の問題ではない。大切なのはどんなに経営が厳しくても絶対に救うという信念とチーム対応力」と語る。
中小支援に絶対的な解はない。しかし「仏作って魂入れず」ではならない。時には”泥臭い“取り組みに学ぶべきヒントがある。
(2016/3/4 05:00)