[ オピニオン ]
(2016/4/13 05:00)
建設現場の生産性向上に、官民が本腰を入れ始めた。国土交通省の有識者委員会が「i―Construction(アイ・コンストラクション)」と名付けた施策を提言する一方、民間の日本建設業連合会(日建連)が「生産性向上推進本部」を設置して基本方針策定を進めている。高齢化による技能労働者の不足は深刻化しており、省力化・省人化は喫緊の課題だ。
建設業界では1990年代のバブル景気をピークに、技能労働者の減少を上回る速さで建設需要が縮小してきた。このため生産性向上がインセンティブとして働かなかった側面がある。
ただ近年は技能労働者の高齢化で、担い手不足が深刻になっている。日建連が15年3月にまとめた長期ビジョンでは、技能労働者は25年度までに14年度比で約128万人減少すると試算している。
業界も対策の必要性を自覚しているが、民間だけの取り組みには限界があることも事実だ。建設投資の大きな割合を占める公共工事には国の方針が反映する。例えば民間が3次元データを活用した設計・施工の効率化を進めても、公共工事では従来の図面を前提とした発注仕様や施工管理・検査になっており、制約が出てしまう。
国交省の有識者委員会が提言した「i―Construction」は、建設現場を最先端工場とみなし、各種の規制や既成概念を打破することを狙ったもの。具体的にはICT(情報通信技術)を全面的に活用するとともに、コンクリート工事の規格標準化、施工時期の平準化などを盛り込んだ。同省は早速、4月から土木工事で現在の紙図面基準を変更し、3次元データに基づく15の新基準を定めた。
こうしたICT活用は当然であり、政府としては遅きに失した感がある。今後も、こうした取り組みを継続することが重要だ。産学官のコンソーシアムの設立も視野に入っており、業界としてもこの機会を逃さず生産性向上を加速するべきだ。同時に適正利潤を確保することで、技能労働者の処遇改善にも努めてもらいたい。
(2016/4/13 05:00)