[ トピックス ]
(2016/5/13 05:00)
熊本県や大分県に甚大な被害をもたらした熊本地震の発生から、14日で1カ月になる。地震活動は少しずつ収まりつつあるが、依然予断を許さない状況だ。市民だけでなく熊本地域の大学も被災し、そこで働く研究者や大学が提供する機器やサービスを利用する全国の研究者にも影響を与えている。こうした中、他の国立大学や研究機関が復旧に向けた取り組みと被災者支援を進めている。
(福沢尚季、斉藤陽一)
《熊本大/生命科学研究施設、被害全容把握に時間》
気象庁によると熊本県熊本・阿蘇地方、大分県西部・中部では4月14日21時以降、12日15時までに震度1以上の地震を1399回計測。また内陸や沿岸部では地震の規模を示すマグニチュード(M)3・5以上の地震が12日13時30分現在で236回発生している。熊本地震発生から日が経つにつれて地震活動はおだやかになっているものの、現在も活動は活発と見るべきだろう。
【使用可否を公開】
熊本大学の被災により、全国にいる生命科学関連の研究者にも影響が及んでいる。現在、復旧作業が進められているのは、同大学においてiPS細胞(人工多能性幹細胞)などの研究に取り組む「発生医学研究所」や、実験用の遺伝子改変マウスの製造拠点「生命資源研究・支援センター(IRDA)」などの研究施設。「5月の大型連休明けから専門業者による点検が本格化したが、被害の全容把握には時間がかかりそうだ」と同大学広報戦略室の担当者は話す。
発生研では細胞を光学的に解析するフローサイトメーターや、塩基配列の解析に使う次世代シーケンサーなどの先進機器が被害を受けた。その中には全国の研究者が利用できる「共通機器」も含まれる。同研究所のホームページで共通機器の使用の可否を公開しており、今後も復旧状況を随時更新する予定だ。
IRDAでは細胞の培養装置などが破損した。国内外の約100研究機関から依頼を受けて、約200種類の遺伝子改変マウスを作製していたが、地震発生後は40―60種類しか作れない状態。復旧には最低でも2―3カ月かかるとみている。
【大学が連携支援】
こうした中、熊本大を継続的に支援するため、全国の国立大学が連携する動きも進んでいる。九州大学は連携の窓口として「熊本大学支援連絡会」を設置。同連絡会には現在73大学が参加している。食料品や生活用品の支援、職員の派遣などの要望に柔軟に対応することで、熊本大の研究体制の復旧を後押ししている。
《防災研/地震の調査・情報を発信》
被災者支援の取り組みも進む。防災科学技術研究所は熊本地震発生後、各部門・センターで地震の調査や情報発信などを始めた。
【地図拡大表示】
防災研地震津波火山ネットワークセンターは、全国の地震計で観測した地震情報の配信や緊急地震速報の予測情報を表示するウェブサービス「新強震モニタ」に、九州地方の地図を拡大して表示できる機能を追加。地震の発生場所や揺れている場所を詳細に示すことで、被災者の不安を取り除く効果が期待される。
一方、火山防災研究部門は火山の観測データから阿蘇山の活動を分析。熊本地震の発生前後で、火山活動の活発さを表す指標などに変化がないことを確認した。
総合防災情報センターでは、防災研の地震に関する調査情報を発信している。さらに地震情報を発信する国・省庁や自治体のホームページ、医療やインフラ関連の情報サイトのURLを一つに集約したウェブサイト「熊本地震クライシスレスポンスサイト」を開設。被災者が必要とする情報にアクセスしやすい環境を整えている。
多くの被害を出した熊本地震。熊本地域における科学技術の重要な資源や成果を未来につなぐ上でも、さまざまな大学や研究機関などの連携により、復旧の進展を下支えすることが重要といえそうだ。
【私はこう見る/東大地震研究所災害科学系研究部門副署長・古村孝志氏「『連鎖地震』防災に活用」】
今回の地震のポイントは二つ。一つは14日に最初の地震が発生してからしばらくの間、1日おきという短期間に地震が連鎖して発生したこと。もう一つは、最初の地震の影響で離れた場所でも地震が起きたことだ。
熊本県には、北東から南西にかけて布田川・日奈久断層帯が延びている。今回は日奈久断層帯で発生した地震が布田川断層帯の地震を誘発した。ある断層で発生した地震が連鎖して隣の断層の地震を誘発するタイプは最近では珍しい。
今回の地震では家屋の倒壊による死者も多く発生した。今後に備え、耐震補強や耐震診断を行うほうがよいだろう。今回の地震で得られた知見から地震についての国民の理解を深め、今後の防災に生かすことが重要だ。
(2016/5/13 05:00)
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