[ 科学技術・大学 ]

早大など、腸内細菌で相次ぎ研究成果−関連疾患予防に糸口

(2016/7/28 05:00)

ヒトの健康に関わる腸内細菌の集団(腸内フローラ)の研究成果が相次いでいる。早稲田大学の研究チームは日本人を含む12カ国のヒトの腸内フローラの解析から日本人に特有の細菌集団の特徴を発見。また熊本大学は腸内フローラの変化が服用する薬の効果や副作用に影響を与える可能性を明らかにした。こうした成果は腸内フローラが関わる疾患の予防や治療、薬の適切な投与の設計などにつながると期待される。

ヒトの腸内フローラは約1000種類、数百兆個の共生細菌によって構成されている。その細菌の種類や数は肥満やアレルギー、自閉症などに関わることが明らかになりつつある。

早大の服部正平教授らは106人の日本人の腸内フローラの全遺伝情報(ゲノム)を解析し、500万個の遺伝子を発見した。日本人ではビフィズス菌などが多かったり炎症反応が少ない腸内環境を示すなど、他国に比べ腸内環境が健全な状態であることを示した。

また国立がん研究センターや東京工業大学は、腸内フローラのゲノム解析に欠かせない糞便の簡便な保存方法を開発。腸内フローラの研究の進展からがんを含む疾患の予防や治療、生活習慣の改善などにつながるかもしれない。

腸内フローラが薬の効き方に影響するという可能性も示唆された。熊本大学の大槻純男教授らは、抗菌薬を5日間投与し腸内の細菌の総量が低下したマウスを使い、薬の解毒や排せつに関わる肝臓と腎臓への影響を解析。薬物の解毒に関わる酵素や抗がん剤を運ぶために必要なたんぱく質などの量が減少していることを突き止めた。ヒトにおいて同様の仕組みが見つかれば、個々の患者に適した薬の投与計画を立てられるかもしれない。

腸内で共生する細菌はヒトの健康に大きく影響する。今後の研究で腸内細菌とのより良い共生関係が見つかる可能性がある。

(2016/7/28 05:00)

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