[ ロボット ]

【電子版】ロボット関連ビジネススタートアップ(1)DMM.make AKIBA

(2016/8/5 05:00)

今回から5回にわたって、「The ROBOT イノベーション×ビジネス」(7月号)に掲載されたロボット関連スタートアップの記事を再掲します。

◇   ◇   ◇

アイデアを形に、そしてビジネスに変える。それを世に問うためにはスピーディーな成長が必要だ。しかし、イノベーションを目指していてもビジネススタートアップには問題が山積みだ。試作をどうするか? 資金調達は? 人材のリクルーティングは? 量産体制は? 販路開拓は? すでに、最初のハードルをクリアし、次のステップに向かっている先輩スタートアップ企業に、経験と実践を語ってもらった。

  • DMM.make AKIBA

【スタートアップに必要な環境を手に入れる】

DMM.com がモノづくり起業家のためのシェアオフィスとして「DMM.make AKIBA」をオープンして1 年半。当時5 億円の機材が使える贅沢な環境や、3D プリンターを使った試作の利便性などがクローズアップされていたが、最近では利用者どうしのコワーキングや大企業ユーザーとの意見交換など、ユーザー間の活発な関わり合いが新たな価値を生み出している。

ハードウェア系モノづくり環境

  • エヴァンジェリストの岡島康憲氏

ハードウェア系のスタートアップには、開発環境は重要だ。Web などソフトウェア系はPC があれば開発を進められるが、モノづくりにはそれなりの設備が必要になる。昔はガレージメーカーという言葉もあったように、少ない設備投資で作り出された製品も多かったが、現在、製品に求められている品質を満たしたうえでの起業を考えるとハードルはかなり高いといえる。

東京・秋葉原で、フリーアドレスのオフィススペースと少人数用のチームルーム(個室)、シェア型の工場スペースを月額料金で提供する「DMM.make AKIBA」は、そんなハードウェア系スタートアップにとって非常に魅力的な存在だろう。

オープンして1 年半ほどだが、現在アクティブな個人会員が400 名、利用する企業や起業前のグループも40 チームほどある。オープン当初はスタートアップが多かったが、最近は大手企業の社内ベンチャーなども1 割程度まで増加している。学生やスタートアップなどのスモールチームの場合、デスクワークと試作に利用するケースがほとんどだが、大手企業がブランチ的に契約している場合にはデスクワーク以外に、イベントなどを開催して自社製品の情報を発信したり、フリーアドレスで生まれる作り手(個人会員やチーム)との新たなコミュニケーションなども利用目的になっている。

オフィススペースとは別に、多数のマシンが設置されたスタジオも利用可能だ。3 軸/5軸のコンピューター数値制御(CNC) 工作機械をはじめとする各種加工機械、チップマウンターなど多様な設備、3D プリンターなど最新の機器、各種認証試験や環境試験などを行える設備を備えた部屋も用意されている。

  • カフェも併設されているフリーアドレス型のオフィス「Base」

スタートアップの最近の傾向

DMM.make AKIBA でエヴァンジェリストを務める岡島康憲氏は、スタートアップを「短期間で製品を製作して販売し、急成長を目指すチーム」と定義したうえで、「最近のスタートアップは活動領域が広がっている」と指摘する。数年前はWeb デザインによるエンターテインメントや検索技術を使ったシステム開発などがスタートアップの中心だったが、最近ではロボットやIoT(モノのインターネット)などハードウェアを使ったスタートアップも増加した。この分野での資金調達も可能になってきており、こうしたハードウェア系のスタートアップがDMM.make AKIBA のメインとなる利用者だ。

オープンから1 年半で、すでにDMM.make AKIBA 発の製品がいくつも商品化され、量産に向けて進んでいる。モーションセンサーとフルカラーLED を内蔵した光るスニーカー「Orphe(オルフェ)」を開発したno new folk studio inc(. nnf、東京都千代田区)も、DMM.make AKIBA の利用者だった。また、大きなものでは日本初の公道を走れる電動バイク「zecOO(ゼクー)」がある。さらに、投球動作などアスリートの高速な動きも可視化できるprimesap(東京都千代田区)社のモーションセンサーなどもDMM.make AKIBA 発だ。

  • .make ディストリビューションの板谷稔上級副社長

「モノ」を作って「売る」まで

DMM.make AKIBA のビジネスは、レンタルスペースと、その場所から生み出される製品流通の二本柱だ。モノを「作る」だけでなく「売る」ところまでカバーする環境は前例がなく、現在のスタイルは試行錯誤の末たどり着いた答えだった。

国内の流通に関しては、DMM.makeAKIBA 内でマッチングした企業どうしの共同作業になるという。しかし、スタートアップの製品が量産、流通まで進むにはいくつもハードルがあると、流通を担当する.make ディストリビューションの板谷稔上級副社長は語る。事業が確立した企業に比べて「スケジュール変更が起こりやすい面はある。開発の遅れや部材調達がうまくいかないなど、解決しなくてはならない課題がいろいろ出てくる」(板谷稔上級副社長)という。それらを1 つひとつクリアして、流通段階へ進んでいく。

  • スタートアップから大企業まで入居する個室エリア

DMM.make AKIBA が考える販路は国内だけではない。板谷上級副社長は「海外流通で重要になるのは、その企業の発信力だ」と指摘する。賞を獲得したり、海外イベントで注目されたりすることが特に効果的だという。「nnf のOrphe も、アメリカのIndiegogo(インディーゴーゴー)でクラウドファンディングを達成したことで、早い段階から世界で認知されていた。海外からも売りたいという問い合わせが多く、それに対応することで販路を拡大した。また、カメラ単体でUSTREAM ライブ配信ができる『CEREVO Cam』などは、すでに50 カ国で販売しており、彼らは100 カ国での販売を目標としている」(同)

DMM.make AKIBA 発の製品をグローバル展開するだけではなく、逆に海外スタートアップの製品を日本国内で流通させたいという依頼も多く持ち込まれる。現在も10 製品以上について話を進めているという。

スタートアップからの卒業

DMM.make AKIBA の提供するレンタルスペースでチームルームは3 人用と6人用の2 種類がある。プロダクトが認められ資金を調達できた企業は、投資家からスタッフの増員を求められることも多く、新たなスタッフを雇用してこのスペースから巣立っていく。

出ていく先は、国内の新オフィスとは限らない。視線追跡型のヘッドマウントディスプレイを開発したFOVE は、現在その拠点をアメリカ西海岸に構えている。

DMM.make AKIBA は、これからも多くのスタートアップが巣立っていくモノづくりの聖地として、新しい挑戦者たちを見守っていくだろう。

  • 開発・検証に必要な機材・設備を数多くそろえた「Studio」

【DMM.makeの3Dプリントビジネス】

ロボットやIoT デバイスに限らず、完成予想の模型やパッケージにいたるまで、起業には試作がつきものだ。そうした用途に大きな影響を与えたのが3D プリンターの普及だ。設立時から3D プリント事業に携わっているDMM.make では、BtoB を中心とした3D 出力をビジネスにしている。3D プリントは今後の技術進歩に伴うニーズ拡大が予測されるため、需要拡大に向けて多面的にアプローチしていきたいという。

メインはサービスビューロー事業

  • .make事業部3Dプリント部門の川岸孝輔マネージャー

DMM.make の3D プリントビジネスは、同事業部の立ち上げ時、西麻布のコワーキングスペースでスタートした。ビジネスのスタイルは3D プリントのサービスビューロー(出力センター)、台数は10 台くらいだったという。現在は25 台程度を保有しているが、その大半はDMM.make AKIBA ではなく、石川県加賀市にある工場に置かれている。

「DMM.make AKIBA では、動作検証が不十分な機器と装置メーカーにプロモーション効果を狙ってショールーム的に置いてもらえるものを設置している」と川岸孝輔マネージャーは語る。

CNCマシニングセンターや旋盤など、DMM.make AKIBA 内の設備はスタンダードな機種を揃えているが、3D プリンターは現在も新製品が次々に出てくる分野であるため、スタートアップの会員用に提供する機種(モデル)が固定しにくい状況だ。DMM.make AKIBA 内で出力するよりも、データを受け取り、加賀工場で出力するほうが出力方式の選択肢も多い。

3D プリンター活用促進のための課題

  • DMM.make AKIBAの3Dプリンタールーム

3D プリンターはテクノロジー的には進歩が続いているが、利用はそれほど急激に伸びているわけではない。現在3D プリント部門の利用客はBtoB ニーズが7 ~ 8 割だ。ホビー利用もハイアマチュアが多いという。金属材料の使えるレーザー焼結のニーズが高く、産業分野で必要とされる密度の高いものが作れる。出力できる造形サイズは70センチメートル角くらいまでだ。

3D プリンターの利用については、人材面の育成もまだ不十分と川岸マネージャーは指摘する。

「3D モデラーの多くが、クレイモデルなどの製作経験が少なく、実物感を持っていないため、データを作ってきても出力できないことがある」(川岸マネージャー)

PC のディスプレイ上では太く見えても、実際には厚みが0.1 ミリメートルないような造形物のデータは、出力できない。

「今はデータをモジュール化して利用促進を図っている。スマートフォンのケースなどは共通で使える構造なので、造形保証付きのテンプレートなどを作製して提供していく」(同)

モジュール化した部品を組み合わせて改変することで出力に耐えるデータ化を進め、より利用を拡大していきたいという。DMM.make では3D プリントは最終的にはC to C(消費者間取引)のマーケットプレイスが成長していくと予測しているが、現状はまだユーザーの参入障壁は高いといえる。

しかし、3D プリント産業全体を眺めると、新しい技術の登場など、将来に向けた明るい兆しもある。

「国内でも装置メーカーが台頭してきている。これが材料メーカーとコラボすることで新しい材料が生まれようとしている。DMM.make でも、耐熱性や長期の使用に耐える3D プリンター用のスーパーエンジニアリングプラスチックの開発や検証に協力していきたい」と川岸マネージャーは語る。

(次回は8月12日掲載予定)

(2016/8/5 05:00)

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