[ オピニオン ]
(2016/8/4 05:00)
第3次安倍晋三再改造内閣が発足した。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官はじめ内閣の骨格を維持しつつ、閣僚のうちほぼ半数を交代するのは従来と同じであり、円滑なスタートが期待できる。まず2日に決定した経済対策に取り組み、成長戦略を加速してもらいたい。
首相は組閣後の会見で「最優先課題は経済。未来に向けて挑戦あるのみ」と決意を述べた。産業界は、その言葉の実現を望んでいる。
経済関係閣僚では麻生財務相の他、石原伸晃経済再生・経済財政担当相、高市早苗総務相らが留任。経済産業相には初入閣ながら官房副長官など実務経験豊富で、首相が「成長戦略の切り込み隊長」と期待を寄せる世耕弘成氏が就任した。
経済対策決定直後の内閣改造はあまり例がないが、この顔ぶれなら政策のブレは想像しにくい。5月に開いた主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)で宣言したように、経済の下振れリスクを回避すべく持てる政策手段を総動員してほしい。
日本経済を巡る環境は楽観できない。新興国経済の減速に加え、英国の欧州連合(EU)離脱のように今後が予想しにくく、また長く尾を引きそうな問題が起きている。
産業界にとっては、為替レートの円高傾向が最も大きな懸念材料だ。世界経済の混乱の中で比較的安全な資産とされる円に資金が集まり、日本の輸出産業の足かせとなっている。また15日に発表予定の2016年4―6月期の実質国内総生産(GDP)は、わずかにプラスになると見込まれる。失速を回避しつつ、なんとか景気浮揚の道筋をみつけることが新内閣の最大の使命だ。
そのためには金融・財政政策に頼るだけでなく、中長期に向けた成長戦略に真剣に取り組まなければならない。産業界は経団連が主導して「ソサエティー5・0」という新たな経済・社会構造のビジョンを提唱し、政府の第5次科学技術基本計画にも明記された。政財界が力を合わせ、こうした新たな流れを巻き起こすことを期待する。
(2016/8/4 05:00)