[ エレクトロニクス ]

東北大など、次世代メモリーMRAMの記録性能を向上−素子を薄く均一に積層して実現

(2016/8/18 05:00)

  • MRAM向けに開発した磁気トンネル接合(MTJ)素子の顕微鏡写真。薄膜層を均一に形成、タングステン(W)を組み合わせることで出力性能を高めた

東北大学の手束展規准教授は、次世代メモリーの磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM、用語参照)で、記録性能を高める技術を開発した。情報の記録に必要な磁気トンネル接合(MTJ)素子の出力を従来の約2倍の200ミリボルトに高めた。素子を構成する材料の組み合わせを工夫し、薄く均一に積層して実現した。MRAMの実用化に必要な大容量化・高集積化への貢献が見込める。

キヤノンアネルバ(川崎市麻生区)と共同で開発した。MRAMはMTJ素子内部の二つの磁性の向きを、電圧をかけて変化させることで情報を記録する。互いの磁性の向きが垂直に近づき出力が大きいほど、性能は高まる。実用化には、小電圧で効率よく出力を上げる技術が求められている。

今回、MTJ素子の酸化マグネシウム(MgO)絶縁層を、厚さ9オングストローム(100億分の1メートル)という薄さで、均一に作製した。またMTJ素子を構成する薄膜層の中にタングステン層を入れ、垂直方向の磁化の安定性を高めた。電圧をかけた際に生じる抵抗値を低く抑えたまま、出力電圧を上げられた。

今後は磁化の安定化や抵抗値の低下につながる技術を開発する。MRAMの書き込み速度の向上や消費電力の削減が可能になる。

MRAMはDRAMに変わる不揮発性メモリーとして、実用化が期待されている。情報の読み込みと書き込み時以外は電気を使わないため、数十ナノ秒(ナノは10億分の1)という短時間で書き込みが可能になる。

【用語】磁気ランダムアクセスメモリー(MRAM)=記憶素子に磁性体を使った不揮発性メモリーの一種で、磁気によって情報を記憶する。現在、実用化されているDRAMに比べて書き込み速度が大幅に速く、低消費電力化や高集積化が可能とされている。

(2016/8/18 05:00)

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