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[ 自動車・輸送機 ]
(2016/11/29 05:00)
トヨタ自動車が技術開発の革新を図り、品質工学の導入にスピードを上げる。「必要な技術の機能(働き)は何か」を重視する品質工学により、まずはエンジン部品の異音や変形を減らす設計などから始めた。11月18日に東京都内で開かれた品質工学会の「技術戦略研究発表大会」でも、発表事例のすべてをトヨタが占める異例の構成となった。長期には自由度が高く、全体最適も図れる設計手法に再構築し、日本のモノづくりを先導する役割も担おうとしている。(南大阪支局長・田井茂)
【エンジンから】
「『もっと考える設計』をエンジンに採り入れたい」。橘鷹伴幸パワートレーンカンパニーユニット開発基盤デジタル改革部グループ長は品質工学を拡大する狙いをこう力説する。エンジンは低燃費・高出力の競争が激化しているが、新たな設計が招く予測困難な不具合も増えている。
そこで、製品の機能を初期から予測・評価できる品質工学の手法が、克服には適していると判断。クランクシャフトの異音やシリンダーボア変形、クランクシャフト形状などを、品質工学で未然に抑制・適正化する試みを積み重ねてきた。トヨタはこれらを技術戦略研究発表大会で公開。この意気込みに参加者の関心も高く、15年の約2倍の215人が集まった。
【車業界の課題】
トヨタをはじめ自動車業界は、3次元CADやコンピューター利用解析(CAE)で、シミュレーション(予測)設計の高度化とモデル化を急いでいる。反面、「技術の本質を知らなくても運用でき、ブラックボックス化が進んだ」(橘鷹グループ長)。すると、新しい設計が要素の交互作用などで引き起こす未知の不具合に出くわしても、解明できないおそれがある。橘鷹グループ長は「機能のつながりなどをシステムチャート化した『機能モデル図』を作成し、『もっと考える設計』に転換し、計測による解明や手直しの不要な設計に挑みたい」と意欲を示す。
【強い危機感】
トヨタを技術指導する応用計測研究所(茨城県取手市)の矢野宏社長は「自動車メーカーはバブル経済のころ部品メーカーに技術を丸投げし、低下を招いた。失敗だったと、ここ数年でようやく気づいた。トヨタも今は高収益だが、危機感は強い」と説明する。「もっと考える設計」を、車両開発全体の技術に広めたい考えだ。
技術戦略研究発表大会のある参加者は、「『考える』ことは技術者の原点。トヨタには日本全体のモノづくりを視野に入れて、今後も情報発信してほしい」と期待を寄せた。
(2016/11/29 05:00)
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