[ オピニオン ]
(2016/12/16 05:00)
米国金融当局が経済の過熱引き締めに、断固たる姿勢を示した。トランプ次期政権との綱引きが注目される。
米連邦準備理事会(FRB)は現地時間13―14日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、金利誘導目標を0・25ポイント引き上げて0・50―0・75%とすることを決めた。利上げは昨年12月以来1年ぶり。同時に2017年中の利上げ見通し(中央値)を3回とし、引き締めの加速姿勢を示した。
この利上げは金融市場の予想通り。最も注目されていた今後の利上げペースについては、前回9月の見通しの17年中に2回から増やした。FRBのイエレン議長は会見で「これはわずかな修正にすぎない。失業率が低下したことなどを踏まえて判断したもの」と語った。しかし、これを言葉通りに受け取ることはできない。
トランプ次期政権がまだ財政政策を打ち出していないにもかかわらず、市場はインフレ期待を先取り過ぎており、金利上昇も含めて米国の金融コンディションは引き締まり気味だ。こうした中での今回のFRBの決定は、ドル安と資産バブルを狙うトランプ氏周辺へのけん制だろう。これまで利上げ見通しに慎重だったイエレン議長が新政権誕生を目前にして、断固として景気過熱を押さえ込む意思を示したといえる。
トランプ氏側としては、大統領就任直後に金融引き締めが進んで景気拡大局面が転換点を迎えるのは避けたいところ。新政権が為替やFRB人事への介入などの関与を強めてくることが予想される。
すでに大統領選の前後から10円以上もドル高円安が進んでいる。トランプ政権が公約通りに保護主義的な政策を実践するためには、自国の輸出産業にとって逆風になるドル高の解消が大きな課題となる。
また新政権が10年で1兆ドル(約117兆円)という大型の景気刺激策を実行したとしても、効果が表れるのは早くて来年末。その前に足元のドル高と金利上昇が、米経済の下押し圧力となる可能性は小さくない。
(2016/12/16 05:00)
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