[ 科学技術・大学 ]

家庭用プリンターで眼病検査−慶大が試験紙開発、コストは200分の1

(2016/12/16 05:00)

  • 左側は通常の光の環境で撮影、右側は紫外光を当てて撮影。光の線の長さと目盛りを照合し、涙液中のラクトフェリン濃度を読み取れる(慶大提供)

慶応義塾大学理工学部のチッテリオ・ダニエル教授らは、涙液に含まれる糖たんぱく質の一種「ラクトフェリン」の濃度を10分で簡単に測れる検査用試験紙を開発した。家庭用インクジェットプリンターを使い、涙液が染みこむ流路部分にラクトフェリンと反応する試薬を印刷。紫外線を当てると反応箇所が緑の蛍光を発し、光った長さと目盛りを照合して濃度を読み取る。ラクトフェリンの濃度により、ドライアイなどの眼病の状態が簡単に分かる。

開発した試験紙は長さ約2センチメートル。末端に涙液を約2マイクロリットル(マイクロは100万分の1)垂らして測定する。既存の測定法である抗原抗体反応を利用した「ELISA(エライザ)法」と比べて、ほぼ同じ結果が得られることを確認した。

ELISAは使用する試薬が高額な上、測定に2時間以上要するなどの難点がある。これに対し、開発した試験紙は抗体を使わないため、「材料や試薬コストを約200分の1に削減できる」(チッテリオ教授)。熟練技能を必要とせず、検査時間を大幅に短縮できるのも利点だ。

チッテリオ教授らは過去に、紫外線照射下で試験紙の蛍光部分をカメラ撮影し、その画像の緑色成分を解析してラクトフェリン濃度を定量化する技術を開発した実績がある。最新の試験紙は、カメラ撮影や画像解析を必要とせず、「棒状温度計を読み取るのと同様の感覚」(同)で濃度を目視確認できる。

涙液などに含まれるラクトフェリンは、抗炎症や抗菌性のあることが知られている。ドライアイの患者はラクトフェリンの濃度が低下するなど、涙液の機能が弱まっている。また、そのほかの眼病との関連性も指摘されている。

16日に東京・丸の内の東京国際フォーラムで開く「慶応科学技術展」(日刊工業新聞社後援)で展示する。

(2016/12/16 05:00)

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