[ オピニオン ]

【電子版】論説室から/気候変動緩和への取り組みの手を緩めるな

(2016/12/22 05:00)

2017年1月20日に第45代米国大統領に就任するドナルド・トランプ氏は「気候変動はでっち上げ」「気候変動関連国連機関への資金を引きあげる」などと息巻いている。

2015年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」は、要件を満たして今年11月4日に発効した。パリ協定は平均気温の上昇を産業革命前に比べ2度C未満に抑えるため、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにする目標を掲げている。

トランプ氏はこのパリ協定からも脱退する意向表明している。もっともパリ協定は発効から3年は脱退できず、脱退を通告から最低1年かかるため、トランプ氏の最初の任期中は脱退できず、締約国としての義務を負うことになる。

だが、米国は中国に次いで世界で2番目の温室効果ガス排出量、一人当たり排出量では最大である。本当にトランプ氏が気候変動に対して何ら配慮しないエネルギー政策などを実行したら、世界の気候変動に対する取り組みに対し、大きな影響を与えるだろう。

気候変動の懸念は「でっち上げ」ではない。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はじめとする多くの科学者たちの観測によるエビデンスに基づく警告なのである。北極海の氷の減少など世界各地で温暖化の影響が進んでいることを示す事例には事欠かない。これらの事例は米航空宇宙局(NASA)などをはじめとする米国の科学の力に負うところが少なくない。トランプ氏が自国の科学の成果を否定することができるのか注目されるところだ。

もちろん、気候変動は地球規模の問題であり、しかも数世紀にもわたる長い時間軸での考察が求められる。海面上昇にさらされている島しょ国などを除けば、いま、ここにある危機ではないため、不確実性を主張することもできる。

だが、実際には残されている時間は少ないと考えて対処すべきではないだろうか。米国に限らず、すべての国が科学界の観測、研究の成果を真摯に受け止めて気候変動対策に真剣に取り組まなくてはならない。それが将来世代の選択の幅を広げることになる。

(論説委員・山崎和雄)

(2016/12/22 05:00)

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