[ オピニオン ]
(2017/1/12 05:00)
世界最大級の家電見本市「CES」が、大きく姿を変えつつある。次々と新産業を取り込む貪欲さに学びたい。
米国で先ごろ閉幕したCESは、今年で50周年。本来は「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」であり、家電の先端技術を披露する展示会だ。1967年、ニューヨークでの展示物はトランジスタラジオ、ステレオ、白黒テレビだった。
78年にラスベガスに会場を移し、規模を拡大した。CESでデビューした製品には、ビデオカセットやレーザーディスク、高精細テレビなどがある。
日本では、CESに先だって64年に「エレクトロニクス・ショー(エレショー)」が始まった。有力メーカーが集中していたこともあり、世界からCES以上に注目されていた。
その後、通信関連の展示会と統合して「CEATEC」となり、現在もアジア最大級の開催規模を誇る。ただ近年は有力メーカーの出展が途絶えるなど、日本の電機業界の苦境を映したような状態が続いている。
一方でCESは、米国でパソコンメーカーの登場とともに息を吹き返し、その後も姿を変え続けている。近年、注目されるのは自動車関連の出展だ。
自動運転や“つながる車”といった乗用車の新たなあり方を巡って、ITと自動車業界が距離を縮めている。今回のCESでは、台頭する人工知能(AI)と車を絡めた展示が目立った。トヨタ自動車は運転手の表情や動作を認識し、感情や眠気を推定するAIを搭載した試作車を披露。ソーシャルメディアでの発信や車内での会話などから人の嗜好(しこう)も学習するという。
ホンダは所有者が使わない時は自動運転で移動しライドシェア(相乗り)を行うことを想定した試作車を公開した。自動運転車を人が遠隔支援する技術を発表した日産自動車はCES初出展となった。
CESの変貌は今後、世界各地のモーターショーにも影響しよう。消費者をわくわくさせる新たな技術と製品を出展する取り組みが、産業構造のグローバルな変化を主導している。
(2017/1/12 05:00)