[ オピニオン ]
(2017/1/25 05:00)
関係者の見通しの甘さは批判されても仕方ない。開発の成功が最優先だが、そこで立ち止まることなく、日本の航空産業の発展につながる道筋をみつける必要がある。
三菱重工業と三菱航空機(愛知県豊山町)が、国産ジェット旅客機「MRJ」の量産初号機の引き渡し予定を2020年半ばに2年間、延期した。最新安全基準に適合するため、一部装備品の配置変更や電気配線の設計変更をするという。
試験飛行も始まった開発の終盤で、大きな修正を迫られたことは残念だ。半世紀ぶりの旅客機開発に、日本人主体で挑むハードルの高さを見誤ったことが5回目の遅延の要因だろう。
今後は航空機開発に精通する外国人技術者に中核業務を任せる方針に転換し、商業運航に必要な型式証明取得を確実にする方針。開発における外国人比率は3割弱に達するという。苦渋の決断だろうが、この機に外部の専門家からノウハウを十分に吸収してもらいたい。
並行する形で、次世代機の技術戦略立案に着手した。三菱重工はMRJ開発の中で、複合材や強度の試験、非破壊検査、耐雷、非常着水時の挙動予測などの技術、国際共同開発の手法を学んだはずだ。これらを今後、国内の航空部品メーカーに普及させることを考えてほしい。
MRJは国産とはいえ、エンジンをはじめ構成部品の約7割が海外製とされる。日本企業の参画は限定的だ。初めてのジェット旅客機開発で、実績のある海外の技術に頼ることは仕方ない。日本との技術力の差が予想以上に大きかったことを認め、時間をかけてもそれを克服していく必要がある。
航空機の価値のうち、エンジンと装備品の比率は6―7割といわれる。しかし「ティア1」と呼ばれる1次サプライヤーになれるだけの企業が日本には少ない。経済産業省は「MRJや次期完成機事業の成功確度を高めるには、海外機のシェアも獲得できるティア1の企業が国内に存在することが大きな要素になる」という。政府にも、しっかり後押しをお願いしたい。
(2017/1/25 05:00)
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