[ オピニオン ]
(2017/2/6 05:00)
1961年に旧ドイツ民主共和国(東ドイツ)が建設したベルリンの壁が、89年に崩壊するまで28年。それから28年後の今年、トランプ米大統領がメキシコ国境に壁を作ろうとしている。しかもメキシコからの輸入関税を引き上げ、壁の建設費に充てるという。メキシコが反発するのは当然だ。
トランプ大統領から名指しで批判されたトヨタ自動車。メキシコ新工場で生産する「カローラ」は、かつての米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁「NUMMI」(カリフォルニア州)の生産車種だった。
80年代の日米自動車摩擦から生まれたNUMMIは「米国への配慮の塊」(関係者)とされる。設備が古くて高コストな工場はGMの経営破綻後に救済リストから漏れ、2009年に合弁を解消。カローラのメキシコ移管は、その後のトヨタの北米生産再編の結果だ。
一度は役割を終えた工場だったわけで、批判はお門違い。今になってメキシコ工場をダメというのはネゴでなくてエゴに過ぎない。だがトランプ大統領は、日米自動車摩擦の時代に時間を巻き戻すかのような発言を重ねている。
多くの悲劇を生んだベルリンの壁は、新たな希望を求める民衆の力で崩壊した。トランプ氏も歴史に学ぶべきだ。
(2017/2/6 05:00)