[ オピニオン ]
(2017/2/8 05:00)
水素社会の実現に向けて世界をリードするためにも、官民連携で成功させたい。
政府は豪州当局と協力して、液化水素輸送プロジェクトに乗り出した。世界初の液化水素運搬船を建造し、豪州で褐炭から製造した水素を日本に輸送して使用する。運搬船の就航予定は東京五輪・パラリンピックが開かれる2020年だ。
褐炭は自然発火の危険があるため輸送に適さない。現状では未利用資源だが、液化水素に変えて大量消費地に運べば有望なエネルギー源となる。
ただ問題は、液化水素の大量輸送技術が確立されていないことだ。日豪はプロジェクトに先立って国際海事機関に液化水素運搬船の安全基準を提案。16年11月に暫定基準として採択された。新造の運搬船には、この基準を適用する。
運搬船は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受けて、川崎重工業などが建造する。LNG(液化天然ガス)船をベースにするが、より条件が厳しい。
例えば液化水素の沸点はマイナス253度Cで、酸素や窒素の沸点よりはるかに低温だ。空気に触れると酸素や窒素を液化する。液化酸素は強い酸化作用を持つため扱いが難しい。また水素は分子が最も小さく、気化すると漏えいの危険がある。
日豪が提案した安全基準では、超低温に耐えられるタンク材料や漏えい対策、検知器など水素の特性を踏まえた29の要件を規定している。これらをクリアした液化水素運搬船を建造すれば、日本はこの分野で世界のトップに立つ。
水素は環境負荷の小さな次世代エネルギーとして注目されているが、消費地で大量に生産するのは難しい。液化水素の形で輸入・保管できれば水素社会の実現を近づけられる。
こうした先端分野で、日本が世界をリードして基準づくりに取り組んでいることを評価したい。実績ができれば日本の造船業の競争力強化にもなる。大きな可能性を秘めるプロジェクトだけに、官民が緊密に連携して成功を目指したい。
(2017/2/8 05:00)
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