[ ロボット ]

現場発の廃炉ロボット、広がる活躍の場−事例積み上げノウハウ共有

(2017/2/10 05:00)

機能絞り信頼性重視

現場発の廃炉ロボットが活躍の場を広げている。除染やがれき撤去など、現場の技術者が必要に迫られ開発するロボットは、機能を必要最小限に絞り込み部品やユニットに市販品を多用する。コストは低く、信頼性も高まる。東芝はダクト除染ロボを開発し運用、改良を重ねた。その技術は小型散水除染ロボなどの後継機に受け継がれている。事例を積み上げ、ノウハウを共有していく必要がある。(小寺貴之)

【成熟技術を活用】

調査や除染など、東京電力福島第一原子力発電所では多様なロボットが働いている。格納容器内の燃料デブリ調査など未知の課題に挑むロボットは、技術の粋を集めて一品モノの機体が開発される。一方、除染やがれき撤去など膨大な作業量のある仕事では現場の技術者が必要に迫られロボットを開発する。目的は除染であり、ロボット開発ではない。その場で使える技術を組み合わせ、作業を進めながら改良を重ねていく。安価で成熟した技術が選ばれる。

【ダクト除染】

  • ダクト除染ロボ。カメラを支えるフレームは木の坂でところどころ粘着テープで補強

  • 小型散水除染ロボ(東芝提供)

東芝は2号機1階のダクト除染のためにスチーム洗浄ロボを開発した。がれきを除いて床を除染し、さらに線量を下げようと線源を探したところダクトが候補になった。ダクトは天井に設置されているため足場を組む必要がある。まずは人手で洗浄したが効率や累積被爆量を考えると「人がすべて除染するのは現実的ではなかった」と東芝電力システム社の佐藤光吉主務は振り返る。そこでダクト内に入る除染ロボを開発することになった。

ダクトは事故時に高温蒸気が通り、放射性物質が付着したと考えられる。から拭きでは線量は落ちず、水洗いなら線量が落ちた。ただダクトに水を流すと廃水が滴り床を汚してしまう。そこでスチームを採用した。ロボットには市販のスチーム洗浄機を利用。クローラー式ロボにカメラや噴射ノズルを搭載し、遠隔操縦機能を持たせた。ただ試験するとノズルの接地圧が足りなかった。そこで磁石付クローラーに変更した。東芝エネルギーシステムソリューション社の藤畑健二主務は「磁力でダクトに張り付くため、スチームノズルを強く押し当てられる」と説明する。6割以上の線量低減を確認した。

すでに無線LANや操縦インターフェースなどの運用環境が構築されていたことも大きい。ダクト除染ロボは基本機能の洗い出しから2カ月で完成させ、すでに役割を終えている。東芝が開発したサソリ型調査ロボは15年6月に開発され、いまも投入を待つ身だ。現場発のロボットは開発と運用、改良のサイクルが早く回っている。

【改良の系譜】

ダクト除染ロボを基に、小型散水除染ロボや狭所用がれきかき出しロボが開発された。除染や開発を指揮した堀田浩司グループ長は「幹となる技術はできていて、状況に応じてカスタマイズしていく段階。即応するための経験は積んだ」という。ただ現場発ロボのノウハウは技術者自身も過小評価する傾向がある。改良の一つ一つは細々としていて、日々の仕事に追われてもいる。だが改良の系譜をたどってみると、論文が何本も書ける。できるだけ体系化し、廃炉技術者の間で共有していくことが望まれる。

(2017/2/10 05:00)

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