[ 中小・ベンチャー ]

【電子版】「日本のスタートアップが世界で活躍するには」、W杯決勝出場のユニファ社長らが語る

(2017/3/5 08:30)

  • 記者会見に参加した(左から)経産省新規事業調整官の石井氏、ユニファ社長の土岐氏、米フェノックスCEOのウッザマン氏

電子版米サンフランシスコで3月24日に開催される初の「スタートアップワールドカップ(W杯)決勝大会」。世界13カ国16カ所での予選を勝ち抜いた16チームが投資賞金100万ドル(約1億1300万円)の獲得を目指して、ビジネスのプレゼンを競い合う。その決勝大会に向けて2日、日本代表として出場するユニファ(名古屋市中区)社長の土岐泰之氏らが参加した記者会見とディスカッションが都内で行われた。

ユニファは、保育園にいる子どもの状況を写真や動画を通じて離れたところから確認したり、センサーなどで子どもの体調変化を素早く把握したりする、ユニークなIoT(モノのインターネット)サービスを提供する注目企業。「日本のスタートアップが世界で活躍するには」をテーマに、土岐氏と、日本予選の審査員を務めた経済産業省新規事業調整官の石井芳明氏、大会主催者である米シリコンバレーのフェノックス・ベンチャーキャピタル(VC)CEOのアニス・ウッザマン氏の3人によるディスカッションの概要をお伝えする。

  • 石井氏

モノづくり・技術力に特色、弱みはスピード感

—日本のスタートアップの強み、足りないところは何でしょう?

石井 最近、海外のメディアや政府機関から、日本のスタートアップはどんな感じか、すごい会社を紹介してほしい、という問い合わせが増えている。5年くらい前だと、こうした問い合わせはなかった。背景の一つとして産業のあり方が大きく変わってきていることが挙げられる。工業が覇権を握っていた時代からインターネット社会となり、AI(人工知能)やビッグデータ、IoT(モノのインターネット)を駆使してネットとリアルを融合させ、そこでどう闘うかが問われている。こうした文脈で日本の注目度が上がっている。

つまり、ユニファのように保育園とテックをつなげる、さらに農業、建設、医療、既存の産業とそれぞれテックをつなげるところに、日本のモノづくり、技術の強さを生かせる。特に現場に入り込んで丁寧にやるのが日本の特色。その強みを生かして世界で闘ってほしい。

一方で、課題は成長のスピードだ。大きな資金でグローバルに闘いながら成長し、一気に時価総額で高いところまでいく、というスピードが足りない。W杯決勝大会にはクライナー・パーキンスやYコンビネーターといった有力VCも多数やって来る。日本のスタートアップもそうした機会を利用して資金を集め、スピード感を持って事業を伸ばしていってほしい。

ウッザマン 日本のスタートアップの良いところは、細かくてマメな点。ミスをしないので、ある程度のところまでは行く。米国はブンブン振り回す感じで大きくなる会社、ダメになる会社まで含めてスピード感がある。日本のスタートアップの弱点は、グローバルの視点を持っている人が少ないこと。スピードも遅く、資金が十分に足りていない。サッカーのW杯といえばブラジルが頭に浮かぶが、5年後のスタートアップW杯で目立つ国が日本だったらすごいと思う。

現場力で世界に勝つ

  • 土岐氏

—スタートアップとして世界で勝つために必要なことは?

土岐 顧客を見る、顧客の現場をしっかり見ることに集中する。強み、弱みはあるが、日本で最も成功しているのはトヨタ自動車をはじめとする自動車産業。なぜ強いかというと現場を大事にしているから。車は人の命を預かって走っている。それだけ品質が重要となり、現場力で対応している。保育園も子供の命を預かっている。私もエプロンをつけて保育園に入ったりしているが、保育士さんが使いたくなるサービスを追求し、どこまでも現場にこだわっていきたい。

レベルの高い中国勢

  • ウッザマン氏

ウッザマン それぞれの国でそれぞれのトレンドがある。中でもシリコンバレーはいろんなドレンドをリードし、それがほかの国に広がっていく。とくにコンシューマー系では米国の会社が先に進んでいる。AIでもアマゾンやグーグルが世界のトップを走る。米国では技術で勝負という会社が目立って多い。

一方で、昨年末に中国予選に参加した際、中国のスタートアップの技術レベルの高さ、数の多さには信じられないくらい驚いた。バイオ、AI、ロボット、ドローンなど優れた会社が多数ある。米国と似ているのはプロジェクトに政府が関わっていることだ。

日本代表のユニファについて言えば、日本でこれまで、同社のようにユニークな立ち位置のスタートアップを見たことがなかった。決勝大会でも活躍を期待したい。そもそも英国や米国のスタートアップは母国語でのプレゼンなので、言葉で勝ててしまう。決勝大会に向け、英語のプレゼンに加え、Q&Aの想定問答もしっかり準備しておいたほうがいい。

ビジョン語る言葉の大事さ

土岐 英語もそうだが、ビジョンも大事。グローバルでチームや顧客を集め、人や物を動かす言葉の力が、創業者にとっては非常に重要になる。いい機会なのでグローバルのステージで発信し、飛躍につなげていきたい。

—政府として今後の関わりは?

石井 これまでにも成長戦略の一環としてベンチャーへの支援や、大企業や大学と連携してのエコシステム(生態系)づくり、起業家のグルーバル市場への進出を後押しする「シリコンバレーと日本の架け橋プロジェクト」などを行ってきた。政府として、ベンチャーおよびイノベーション支援は至上課題でもある。

先進的な分野に対しては制度を整えていくが、税制や補助金といった面での支援は一巡している。そこで制度とともに運動論を盛り上げることもやっていけたらと思っている。今回の「第3回日本ベンチャー大賞」ではサイバーダインが内閣総理大臣賞を受賞し、経済産業大臣賞(ベンチャー企業・大企業等連携賞)にはプリファード・ネットワークスとファナックが入った。経産大臣賞に込めたメッセージはプリファードのAIと、ファナックのロボットがつながるように、スタートアップと大企業の連携に世の中が動いていってほしいということ。保育園とIoTでつながるユニファのビジネスモデルも同じだと思う。

「グローバルで突き抜ける」

—企業としてスタートアップW杯に出場するメリットは?

土岐 いろんなメリットがあるが、海外に出て行くきっかけになる。日本の平均的なスタートアップだと数億円単位で資金を調達し、4、5年でマザーズに上場というところが多い。でも、そうした生き方は「井の中の蛙(かわず)」とも言える。自分は「グローバルで突き抜けるんだ」という思いを創業時から持っていた。

国内の0〜5歳児の人口は500万人。それに対して全世界では6億人もいて、当社が手がけるようなスマートヘルスは先進国中心に1億人が対象と見ている。国内でも保育士が足りないが、グローバルでも全く人手が足りない。アジアや米国はじめ、W杯を通じて1億人のマーケットに打って出たい。

(2017/3/5 08:30)

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