[ オピニオン ]

産業春秋/サワラの経済

(2017/3/14 05:00)

魚へんに春と書いてサワラと読む。ほっそり長い姿に柔らかな身が詰まっている。俳諧では春の季語。しかし旬は春ではなく、脂が乗った冬場がうまいとされる。

春を迎えると産卵のために外海から瀬戸内海へ群をなして泳いでくる。待ちかまえていた漁師が大漁に沸く。こうして春を告げる魚として「鰆」の字が生まれたと考えられる。

「サワラの値段は岡山で決まる」―。一大消費地は、瀬戸内海に面した岡山県だ。サワラ料理の種類も豊富だが、影を落としているのが地場の漁業資源の減少。

県は小さな魚を獲らないよう網の目を大きくするなど水産資源保護に努めるものの、2015年の都道府県別のサワラ水揚げ量は全国31位。代わって漁が盛んなのは日本海沿岸だ。同年1位は福井県。以下石川、京都、島根と続く。

漁獲量が減っても、岡山県民にとって親しんだ味であることに変わりはない。そこに新たな価値が生じる。サワラを刺し身で食する習慣が根づいた岡山には全国からとびきり鮮度の良いものが集まる。ねっとりとした独特の食感を楽しみに来県する観光客も。サワラ好きの岡山がうまいサワラを全国から引き寄せ、観光資源を生み出して県民の懐を潤す。経済の好循環である。

(2017/3/14 05:00)

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