[ オピニオン ]
(2017/3/17 05:00)
既存ダムの活用は、新設よりもコストと環境負荷の両面で優位にある。具体的な施策を進めてもらいたい。
国土交通省は今夏までに「ダム再生ビジョン」を策定する。ダムを取り巻く社会的な状況が変化しつつある中、既存ダムの有効性や課題を整理し、今後のダム活用に必要な方策を示すのが目的だ。
2015年9月の関東・東北豪雨や、16年夏に相次いで発生した台風による水害は各地に深刻な被害をもたらした。また近年では地球温暖化の影響のせいか、豪雨が増加傾向にある。1時間に50ミリメートルを超える豪雨の年間発生件数は30年前の約1・4倍に拡大した。一方で渇水も毎年、発生しており、過去5年間に国が管理する河川のうち、北海道・沖縄を除く21水系26河川で取水制限を実施した。
言うまでもなく、ダムは台風や豪雨時に雨水を蓄えたり放流のタイミングを調整したりすることで下流域の水害を防ぐ役割を担う。渇水時には地域を潤す水がめの機能を持つ。
また二酸化炭素をほとんど排出しない水力発電は、純国産の再生可能エネルギーとして重要だ。原子力発電所の再稼働の遅れも水力発電への期待を後押しする要素になっている。
むろん負の側面もある。ダム湖の富栄養化や下流域の環境への影響など、人為的な巨大構築物としてのダムが自然環境に与える悪影響には、多くの事例がある。さらにダムを新設するとなれば、より大きな環境負荷を引き起こす。
プラス・マイナスの両方を勘案した上で、既存ダムを活用することが重要だろう。住民の生命・財産が水害で脅かされる事態は防がなければならないし、水力発電は今後、ますます有用性を認められるに違いない。
ダム機能を高める取り組みとしては、貯水容量の拡大に向けたダム堤体のかさ上げや、洪水能力調節能力の増強につながる放水路トンネルの新設などがある。並行して環境対策も必要となろう。ハードとソフトの両面から取り組むことで、効果を最大化してほしい。
(2017/3/17 05:00)
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