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【知財特集】海外機関との連携進む 特許庁

(2017/4/19 05:00)

業界展望台

IoT、AI普及、対応策検討

 第四次産業革命やグローバル化の進展など産業界を取り巻く環境が激変している。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)の普及で、企業の知的財産戦略の重みが一段と増す。競争と協調を巧みに使い分け、世界を勝ち抜かねばならない。地域経済を支える中小企業も例外ではない。産業構造が転換する中、企業の国際競争力強化に資する知財制度の在り方も問われる。特許庁の取り組みの方向性を追った。

◆調和が重要な課題

 日本から海外への特許出願件数は米国、欧州、中国、韓国で8割以上を占める。日本を含めた5カ国によるIP5(世界五大特許庁)の制度調和、運用調和が重要な課題だ。2011年に米国の先願主義移行が実現。18年までに発明の単一性に関するPCT(特許協力条約)国際段階の運用調和を目指すことで合意するなど、活発な議論が進められている。

 一方、日系企業の進出が相次ぐ新興国、途上国の知財システムの整備も欠かせない。特許庁は審査官など専門家の海外派遣や受け入れ研修、世界知的所有権機関(WIPO、国連の専門機関)ジャパンファンドなどを活用し、日本式制度や審査実務の浸透、情報化支援などを行っている。

 17年度はジャパンファンド創設30年の節目。18年2月に途上国・新興国約40カ国の知財庁長官級を招いたハイレベル会合を開く。

 企業のグローバル展開を支える上で、海外での権利化の予見性を高めることは重要だ。特許庁は世界最速・最高品質の審査を実現するべく迅速性を堅持し、質の高い権利を設定、海外特許庁との連携強化を図る。特許庁の提唱で06年に日米間で始まった特許審査ハイウェイ(PPH)の取り組みは現在、参加庁が45まで拡大。日本は37の庁とPPHを結んでいる。

 知財の法執行(エンフォースメント)強化にも力を入れている。今年10月には「日中韓・ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国における知的財産紛争解決」をテーマに、知的財産高等裁判所や法務省などと国際シンポジウムを開く予定だ。

◆中小に取得促す

 一方、国内では中小企業に知財の取得・活用を促し、技術革新や海外展開、経営基盤強化を図ることで地方創生につなげる取り組みを強めている。目玉は昨秋公表した「地域知財活性化行動計画」。全国47都道府県に設置した「知財総合支援窓口」の実効性を高めるKPI(成果目標)を全国、地域レベルで設定し、PDCAサイクルの中で成功事例も共有する。各窓口が競い合うように内容を充実させている。

 今後の大きな山は第四次産業革命への対応だろう。ネットワークを介した製品とサービスが融合する中、協調(オープン化)と独占・差別化(クローズ化)の使い分けが重要。IoTやAI、ビッグデータ、ロボットを最大限活用するにはデータを共有し、利活用することがカギを握る。

 データやAI創作物の保護、国境をまたいだ侵害行為などさまざまな事態を想定しなければならない。特許庁は経済産業省の経済産業政策局、産業技術環境局、製造産業局、商務情報政策局などと連携し、「第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会」を進めており、月内にも中間整理を公表する予定だ。

【経済産業省 特許庁長官 小宮義則氏に聞く】

  • 特許庁長官 小宮義則氏

―海外特許庁との制度調和の進展は。

 「世界の知財制度の調和には日米欧のユーザー団体から強い要望がある。各国が対立する論点についてユーザーの共通見解がまとまりつつある。近年、制度調和の議論は膠着(こうちゃく)しており、すぐに実現できるものではないが、ユーザーニーズを踏まえて日米欧の三極特許庁で制度調和の議論が進み始めた。まずは三極特許庁で合意し、将来は中韓を含む世界全体に広めたい」

―新興国・途上国への支援策は。

 「日本企業の海外展開が進み、新興国・途上国での知財の重要性が増しているが、審査体制が十分でない国も多い。日本から審査官を派遣し、または海外から受け入れて、審査のトレーニングを行っている。日本で特許になった発明を外国で早期に審査する取り決めである特許審査ハイウェイ(PPH)を世界37庁と実施している。新たにブラジル、アルゼンチンと開始し、チリとも始める予定だ」

―世界最速・最高品質の審査を掲げます。

 「任期付審査官の採用や先行技術調査の外注化により、世界最速の審査はおおむね達成してきている。審査の質に対する取り組みとしては、管理職が厳しくチェックし、審査官同士の意見交換や知識共有を進めている」

 「外部有識者による審査品質管理小委員会を設立し、客観的評価を受けている。ユーザーアンケートによる評価は年々高まっており、質が向上していると自負している。IoT関連技術を網羅的に調査するための特許分類の新設や、全国各地で出張面接審査といった取り組みも行っている」

―中小企業の知財活用を促し、地方創生につなげる活動にも力を入れています。

 「統計によれば知財を保有する企業の営業利益率は高く、知財は企業経営に寄与している。しかし、地域の中小企業が知財を十分活用できていないことが積年の課題。昨年9月に『地域知財活性化行動計画』を策定し、支援体制を強化した」

 「中小企業庁の施策や日本弁理士会、日本弁護士連合会、日本知的財産協会、各地域の商工会議所、商工会による支援とも連携したワンストップ支援が理想形だ。各県の県庁の商工政策に沿った、地域ごとの特色を反映したKPI(成果目標)を設定し、生きたPDCAサイクルの確立を目指す」

―第四次産業革命への対応は課題です。

 「インターネットを介した製品とサービスが融合した第四次産業革命に対応するため、昨年10月から『第四次産業革命を視野に入れた知財システムの在り方に関する検討会』を開催している」

 「従来は技術を広めて市場を作るオープン化と、独占することで利益を得るクローズ化の使い分けが重要だった。第四次産業革命ではオープン・クローズ戦略に、ビッグデータやAIといったデータ利活用の視点を加えた三次元の戦略が必要。特許庁の範囲を超える議論なので経済産業省経済産業政策局、産業技術環境局と協力して、日本企業が台頭できる制度設計を実現したい」

【業界展望台】知財活用特集は、4/28まで連載中です。(全9回)

(2017/4/19 05:00)

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