[ オピニオン ]
(2017/4/19 05:00)
「教育力」に的を絞った大学の評価ランキングが登場した。「研究力」重視の従来型ランキングでは入らなかった地方の中小規模大学が30位以内に複数入ったのが特徴だ。同じような環境にある大学が改革を進める上で、有力な指標となり得る。
英教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(THE)を運営するTESグローバルがベネッセグループと協力してまとめた「THE世界大学ランキング日本版2017」によると、10位以内に東京大学、京都大学など“常連”が名を連ねたものの、30位以内に長岡技術科学大学(新潟)、国際教養大学(秋田)、会津大学(福島)、立命館アジア太平洋大学(大分)、九州工業大学(福岡)など地方の単科大が入った。
同ランキングは、評価の26%を高校教員の評判が占めるなど、研究力評価で有名な「THE世界大学ランキング」とはかなり設計を変えている。「全授業に占めるアクティブラーニング(参加型学習)で行われる授業の割合」や「全学生に占める留学経験者の割合」など、ユニークな切り口別の評価もされた。その結果、300近い大学の名が挙がった。
注意が必要なのは、THEのランキングとして、日本の大学の教育力を国内外に伝えることが狙いという点だ。つまり“日本社会で評価される教育力”ではない。留学先を思案する全世界の学生に、活用されることが想定されている。
そのため評価の16%は、外国人の学生比率と教員比率が占める。この比率が高く、国際化の各種対応が進んだ大学なら、新たな留学生がよりよい教育を受けられる、という判断が入っているわけだ。
逆に優れた教育手法を導入していても、日本人学生向け限定なら評価は高くない。その結果がネットを通じて世界に情報発信されてしまう。グローバル時代の厳しさを、改めて感じる大学関係者は多いに違いない。
中小規模の大学が世界を意識するきっかけになり得るのは確かだ。各大学は自らを振り返る材料として活用してほしい。
(2017/4/19 05:00)