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深層断面/東芝メモリ売却、WD抜き日米連合が軸に 意見相容れず「係争覚悟」

(2017/5/12 05:00)

半導体子会社「東芝メモリ」の売却をめぐる東芝と協業先の米ウエスタンデジタル(WD)との対立は、両社の合弁会社の持ち分の売却(移転)に関する見解の相違が焦点だ。相手の同意なしに第三者に売却できないとするWDに対し、東芝は「支配権の変更」による移転に同意は不要との立場。東芝は不信感を募らせており、売却交渉はWD抜きの日米連合を軸に進行する公算が大きくなってきた。(後藤信之)

東芝は米サンディスク(SD)と2000年からメモリーの開発、生産の両面で提携してきた。16年にWDがSDを買収し、WDがパートナーとなった。特に生産面でのつながりは深く、両社が設立した合弁会社が四日市工場の運営に関わる。東芝側が50・1%、WD側が49・9%を出資する合弁会社は両社のメモリー事業の要だ。

東芝のメモリー事業の一連の売却手続きでは、合弁会社の東芝側の持ち分は2回移転する。1回目は東芝から東芝メモリへ、2回目は東芝メモリから同社を買収する第三者への移転。これらの移転手続きをめぐり、東芝とWDで意見対立が起きている。

両社の合弁契約では「相手の同意なく持ち分を第三者に売却できない」と規定しているが、例外なのが「change of control(支配権の変更)」。合弁会社の主体が買収され、結果的に持ち分の所有者が第三者に移転する場合は、相手の同意は不要としている。

  • 東芝再建にはメモリー事業売却が不可欠だ(綱川智社長)

東芝は2月14日にメモリー事業を分社し、株式の過半を売却する方針を示した。東芝幹部は「過半を売る、つまり『支配権の変更』を前提に手続きを進めている。(WD側の同意なしでも)問題はない」とする。

一方、WD側は合弁会社の東芝側の持ち分が、東芝メモリに移る段階から反対している。契約では合弁会社の持ち分を子会社に移転するには相手の同意が必要とするが、「不合理な理由で同意を保留してはいけない」ともあり、基本的にはお互いに容認している。

それでもWD側が異論を唱えるのは、東芝による東芝メモリ設立は第三者への売却が目的との主張に基づく。これを“合理的な理由”に掲げ、東芝から東芝メモリへの持ち分の移転に同意していない模様だ。支配権の変更を強調する東芝と、支配権の変更に触れず第三者への売却という契約違反を主張するWDの意見は平行線だ。

  • 「第三者への売却阻止」を主張し、売却反対の姿勢を崩さないWD(スティーブ・ミリガンCEO)

東芝は合弁契約に規定された支配権の変更の正当性に自信を持っている。WDがSDを買収したケースが支配権の変更に当たるが、東芝は「合意を求められていない」(東芝幹部)ことも根拠だ。「当社の解釈は法律的にまったく問題ない」(同)と自信を示す。

SDは、東芝と合弁契約を交わした00年当時はベンチャー企業だった。投資回収の出口戦略として、SDは他社への身売りを想定していたはず。企業のM&A(合併・買収)に詳しいファンド関係者は「支配権の変更の規定は、出口戦略を東芝に邪魔されないようにSDが設定したのでは」と推測する。事実なら東芝から身を守る武器が、反対に東芝の武器になるというWDには皮肉な状況だ。

メモリー事業の売却は契約違反とするWDに、東芝は3日付で警告書を送付。売却手続きの正当性を訴え「妨害行為」の停止を求めた。同時に最悪の場合、四日市工場の施設や情報ネットワークから、WD側を閉め出すと警告した。東芝幹部は「本気の警告だ。係争覚悟でもやる」と強硬姿勢を示す。

入札手続き、すでに遅れ-売却益2兆円 時間との勝負

東芝メモリの売却先を決める入札ではWDのほか、米ブロードコムや台湾・鴻海精密工業、韓国SKハイニックスが候補に残っている。2次入札からは産業革新機構や日本政策投資銀行、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)の日米連合が参加を目指す。

4月末時点では、WDが矛を収めるよう、この日米連合にWDも呼び込み、入札手続きを円滑化する案が浮上していた。しかしスティーブ・ミリガンWD最高経営責任者(CEO)が一部メディアとのインタビューで「(東芝メモリの)実質的な主導権がほしい」と発言したことなどで、状況が変わった。

東芝は債務超過から脱するため17年度中に東芝メモリを売却する必要がある。WDの出資比率が高まれば、独占禁止法の審査に時間がかかる。東芝の時間的弱みを意識したともとれるミリガンCEOの発言に東芝幹部は態度を硬化させており、「独禁法をできるだけスムーズにクリアするためにも、(同業である)WDからの出資は避けたい」と話す。

入札手続きでは革新機構、政投銀、KKRの日米連合の存在感が増している。今後の焦点は、ここに日本の事業会社の出資が加わるかどうか。水面下では経済産業省が主導し、奉加帳方式で出資を募っており、富士通などが出資に前向きという。2兆円規模とされる買収資金を捻出できるか注目される。

一方、WDの抗議により、入札手続きには遅れが生じている。東芝メモリを期限内に売却できない可能性が高まれば、東芝を支える銀行の姿勢も変わりかねない。WDの攻撃に対し、反撃を繰り出した東芝。これを契機に事態を好転できなければ、東芝メモリ売却をテコにした再建策が根底から揺らぎかねない。

(2017/5/12 05:00)

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