[ オピニオン ]
(2017/6/2 05:00)
17世紀ドイツの天文学者ヨハネス・ケプラーは天体を精密に観測し、惑星の運動に関する三つの法則を発見した。今も地球上空に人工衛星を飛ばすための基本だ。
そのケプラーの第2法則が「面積速度一定」。楕円(だえん)軌道上の惑星や衛星が、一定の時間で移動した距離を軌道面の面積で見ると、常に同じになる。つまり中心近くを移動するときは速いスピードで、逆に遠くではゆっくり動く。
1日、打ち上げに成功した準天頂衛星「みちびき」2号機は、この法則を利用している。日本上空で遠地点を通るように軌道を設定し、わざとノロノロ通過させる。準天頂にいる時間が長いため、地上で電波が受信しやすい。誤差数センチメートルの高精度測位は、さまざまな産業の裾野を広げると期待される。
ケプラーが「みちびき」のような衛星軌道の利用方法を予想していたかどうは分からない。だが一見、何の役に立つか分からない天文学の研究の積み重ねが、こうして花開いたことに面白みを感じる。
科学技術は常に、すぐに役立つ応用分野を重視するのか、それとも基礎分野に光を当てるべきかが議論される。衛星打ち上げのようなイベントの時に、人類の叡知(えいち)のあり方を考え直すことも大いに意味があるだろう。
(2017/6/2 05:00)