[ オピニオン ]

【電子版】論説室から/〝日本版海兵隊〟が来春発足

(2017/6/22 05:00)

18日に閉会した国会で「改正自衛隊法」が成立した。全国の陸上自衛隊の部隊を一元的に指揮する「陸上総隊」を創設し、陸上総隊の直轄組織として〝日本版海兵隊〟といわれる「水陸機動団」を2018年3月までに新設するのが目玉だ。国内に点在する離島などが不法に占拠された場合、離島に上陸して奪還を目指す専門部隊である。

水陸機動団は陸上自衛隊の相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に駐屯する西部方面普通科連隊をベースに組織される。同連隊は上陸作戦を行える部隊を目指して2002年3月に創設。隊員の多くがレンジャー資格を持つ精鋭部隊で、これまでに日本国内や米国で米海兵隊と共同演習も行っている。現在は660人規模で、水陸機動団が発足すれば2000人以上の規模に膨れあがる。

先日、その相浦駐屯地を訪れた。海に面した92万平方メートルの広大な敷地に、さまざまな建物が点在し、水泳や射撃訓練はもちろん、カラビナやハーネスなどを使った山岳登攀訓練、ゴムボートなどを用いた水路潜入訓練など、多彩な訓練が行える。

屋内プールでは完全武装した隊員が平泳ぎで泳いでいた。装備は20キロから30キログラム以上に上り、着衣のまま、靴を履いたまま100メートルを泳ぎ切る。かなりの体力がなければ、泳ぎ切ることはできないだろう。

隣のコースでは、ヘリコプターが墜落し、海上に着水した際の脱出訓練を行う。コクピットに見立てた鉄枠をプールに浮かべ、枠の中に隊員が座り、枠を逆さまにする。隊員は逆さまになったまま、水中で安全ベルトを外し、水上に脱出する。この間、1分以上は呼吸するのを我慢しなければならない。相当きつい訓練だ。

次に建設中の脱出専用プールを見学した。プールの上10メートル程度の位置に横移動ができるクレーンを配置。そこに隊員たちが乗り込んだ実物大のヘリコプターや水陸両用車の模型を吊した上で、水中に落下させ、乗車している隊員たちが順序よく脱出できるように訓練する。これにより、実際に海上に落下した際、一カ所の入り口に隊員が殺到してパニックになる事態を回避し、無事に生還する術を学ぶ。

水陸機動団には水陸両用車の専門部隊も新設される。水陸両用車部隊は、相浦駐屯地から佐世保市中心部を挟んで12キロメートルほど離れた崎辺地区に崎辺分屯地(仮称)を建設して本拠地とする。実際に現地に行ってみると、まだ地盤改良と造成工事を行っている段階だった。今秋以降には隊庁舎や食堂・厚生施設・体育館、整備工場などを着工し、完成は2018年度にずれ込む見通しだという。

配属される水陸両用車は「AAV7」型と呼ばれる米国製車両で、地上ではクローラー走行し、水上ではウォータージェット推進により浮上航行する。乗員3人以外に兵員25人を運ぶことができ、離島への上陸強襲作戦などに威力を発揮する。

ところで、実際に離島が占拠された場合の奪還作戦のイメージはどうなのか。海上自衛隊の艦船で島まで数キロメートルの沿岸まで接近し、そこから水陸両用車やボート、ヘリコプターなどを使って上陸するというのが基本だ。ただ、その前にやらねばならないことがある。航空自衛隊の戦闘機や海自の護衛艦を使って攻撃し、敵を制圧することである。陸自幹部は「敵がガッチリ構えている場所にそのまま入って行くことは難しい。敵をほとんど叩いた後に我々が行く」と話し、人命第一をアピールする。

離島が無人島なら良いが、有人島の場合は空や海からの攻撃は難しく、その場合はどうするのか。また離島奪回作戦は陸海空の3自衛隊の連携が不可欠だが、その辺りはどうなのか。さまざまな課題はあるだろうが、水陸機動団の誕生は、日本の離島を不法に占拠しようとする組織への「抑止力」につながるはずだ。とはいえ、水陸機動団が実際に戦闘する場面は見たくない。相浦駐屯地の食堂で、陸自幹部が自慢する美味しいキーマカレーを食べながらそう思った。

(根本英幸)

(このコラムは執筆者個人の見解であり、日刊工業新聞社の主張と異なる場合があります)

(2017/6/22 05:00)

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