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一日中小企業庁in北海道−モノづくり日本会議

(2017/7/19 05:00)

  • 約500人が出席した「一日中小企業庁in北海道」

北海道と中小企業庁、北海道経済産業局は「一日中小企業庁in北海道」を6月12日、札幌市中央区のニューオータニイン札幌で開いた。円滑な事業承継などについてヒントとなる情報を発信し、道内中小企業の活性化につなげるもので、約500人が出席。中小企業施策紹介や地元中小企業との意見交換会のほか、モノづくり日本会議などが主催する特別講演では諏訪貴子ダイヤ精機(東京都大田区)社長が主婦から社長へ就任し、経営改革に取り組んだ経験などを語った。

【あいさつ】

  • 宮本聡・中小企業庁長官

宮本聡・中小企業庁長官

■新分野で強み生かす

北海道での開催は39年ぶり。現在の中小企業の経済環境についていうと、経済指標上では好転しているのはたしか。北海道の経済環境も緩やかに回復している。

一方、地域経済ではとりわけ業種や事業規模、特に北海道は広いので、地方によってはまだ厳しい状況に置かれている方々や地域もある。中小企業は少子高齢化の中で、人手不足や事業承継の問題、国内市場の縮小、中小企業と大企業の生産性の格差といった、構造的な問題にも直面している状況だ。

ただ、海外市場やIT(情報技術)など新たな分野の中でビジネスチャンスも広がっている。自らの強みを生かし、創意工夫で弱みを克服し、素晴らしい成果を上げている中小企業・小規模事業者も多い。

もちろん北海道にも全国に誇れる事業者がたくさんいる。ほんの一例を挙げれば、食品加工機械製造業のニッコー(北海道釧路市)は、ホタテの自動生剥むき機などを世界で初めて実用化し、水産関係で非常に付加価値の高い事業展開をしている。バーチャルシンガー「初音ミク」の開発で有名なクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市中央区)は、インバウンド需要獲得などに向けて、関連商品の輸出に前向きに取り組む。

こうした中小企業の前向きな取り組みを中小企業庁としては積極的に支援したい。中小企業の稼ぐ力の強化、活力のある担い手の拡大、安定した事業環境の整備を柱に取り組んでいる。

本日の「一日中小企業庁」が皆さまの今後の事業活動の一助になり、北海道全体の経済発展につながってほしい。

  • 高橋はるみ・北海道知事

高橋はるみ・北海道知事

■振興条例踏まえ施策

北海道においては、人口減少に伴う需要の減退や地域経済の活力低下が懸念されるなど、中小・小規模企業を取り巻く環境は厳しさを増している。特に後継者不足による休業・廃業の増加など事業活動の継続が喫緊の課題だ。

このため、北海道は2016年4月に経営体質の強化、事業承継の円滑化、創業などの促進といった三つを柱とした「北海道小規模企業振興条例」を施行した。今後、この条例にもとづき、企業や地域のニーズを踏まえた施策を展開し、地域経済の持続的な発展に向けて、中小・小規模企業の振興にしっかりと取り組んでまいりたい。

事業承継に関連した活発な議論が展開されるとともに、皆さま方にとって「一日中小企業庁」がこれからの事業展開の一助となることを期待する。

【特別講演】

  • 諏訪貴子・ダイヤ精機社長

諏訪貴子・ダイヤ精機社長

■主婦から社長へ就任した2代目の10年戦争

東京都大田区で1964年に父が創業した。その父が13年前に急逝し、私が代表に就任した。当社は自動車部品を測定するゲージが主力だが、職人の五感で鉄をミクロン単位に磨く技術を持っている。

創業時を振り返ると、私の兄が病気になりサラリーマンをしていた父が、治療費を稼ぐためもあり、やはりゲージを作っていた親族からのれん分けしてもらい立ち上げたという。残念ながら兄は亡くなったが、父は仕事を続け、やがて二代目がほしいと考えた。兄の上に姉がいたが次に産まれてくる子供を二代目にしようと決めたようだ。それが私で、兄と違う点は女の子だったこと。父は落胆したが、子供の頃恥ずかしがり屋で人見知りだった私を、しっかりと育ててくれた。工学部に進んだが就職の時期にバブル崩壊。今でこそリケジョといわれるが就職は厳しかった。なんとか大手部品メーカーに入り、秘書に配属されると思っていたところが現場のエンジニアに。しかし、2年間で生産管理、品質管理からあらゆることを学ばせてもらった。

その後結婚し、男児を出産して退職。病院で父に「でかした。この子を二代目にする」と言われ、肩の荷が下りた。専門学校に入り別の仕事を始めたが、当社もバブル後で厳しくなっていたので手伝うことにした。業績を診断しリストラを進言したところ、私だけがリストラされることになった。その時は意味がわからなかったが、今ではわかる。雇用を守りながらも売り上げを伸ばしたかったのだろう。

父は病がちになったためか、夫の海外転勤に伴う転居が決まった際「残ってほしい」と私に告げた。それでも準備を進めていたところで容体が急変。まさに青天の霹へき(へきれき)で、恥ずかしながら事業承継の準備を全くしていなかった。

父が他界した翌日、会社に行ったところ誰が社長を継ぐかという問題に直面した。夫には自分の仕事を続けてもらうことにした。社員の皆さんに「全力で支えるから社長になってくれ」と言われた。それでも20人以上の社員を支えられるかと悩んだ末、命までは取られないと考え社長に就任した。

二代目、それも娘が継いだことで悪いうわさも流され、金融機関からは合併も勧められた。しかし32歳と若かったこともあり「半年で結果を出す」と見えを切り、まずリストラを敢行した。そしてスピード感を持つため3年計画の社内改革に取り組んだ。「ものづくり大田区を代表する企業」として、「超精密加工を得意とする多能工集団」を目指すことにした。社員の意識改革から始め、設備投資で社内を活性化し、町工場のIoT(モノのインターネット)化を進めた。

当社の使命は日本のモノづくり技術を後世に引き継ぐこと。モットーは「ザ・町工場を目指そう」だ。日本のモノづくりは大企業と小さな企業がそれぞれの役目を果たして、強い技術を生んできたと思う。だから当社は小さな町工場の役割をしっかり果たす。

町工場とは何か。限られたヒト・モノ・カネでいろいろなモノを多品種少量生産で作らなければならない。だから人間の知恵が必要だ。当社の場合、問題が生じたら皆が集まって知恵を出し合う。ある程度の問題はコミュニケーションを通じて解決できるのではないか。それが町工場の醍醐味(だいごみ)だ。現場で二人が何か話し合っていたところにもう一人が通りかかったら、必ず話の輪に入るよう教育している。

技能を残すには若い社員を育てていかなければいけない。しかし、私が社長に就任した時、私より若い社員は3人しかいなかった。これでは技能を残せない。07年から人材確保と育成に取り組んでいる。まずハローワークを通じて求人した。しかしなかなか集まらない。そこでプロジェクトチームを立ち上げパンフレットを作ったり、マッチングフェアで技術を展示したり、インターンシップを受け入れるなど工夫した。その結果、10年かかったが20代、30代が中心となるきれいなピラミッド構造ができた。やっとスタートラインに立てた気分だ。

【中小企業フォーラム(意見交換会)】

  • 道内4社の代表らが参加した意見交換会

〈出席者〉

沿海調査エンジニアリング社長・大塚英治氏

フュージョン社長・佐々木卓也氏

田中工業社長・田中惣一郎氏

北海道事業引継ぎ支援センター統括責任者(元北原電牧社長)北原慎一郎氏

中小企業庁長官・宮本聡氏

北海道経済産業局長・児嶋秀平氏

北海道経済部長・阿部啓二氏

〈コーディネーター〉

小樽商科大学商学部教授・穴沢眞氏

■円滑な事業承継で飛躍

(児嶋) 本日は道内4社の代表から意見をいただき、今後の中小企業支援のあり方を探っていきたい。

(穴沢) まず北海道庁から中小企業支援施策について説明してもらい、企業の皆さまからは自社の取り組みや事業継承に関する経験などを発表いただく。道内中小企業の抱える課題やその支援に必要な施策について議論を深め、地域を支える中小企業が新たに飛躍するヒントを探りたい。

(阿部) 中小企業施策の他、今回の主要テーマでもある事業承継についても話したい。道内の中小企業数はこの5年間で約1万5000社減少している。そのほとんどが小規模企業だ。休廃業する企業の比率も高いが、後継者が決まっていない企業が多いのも特徴。経営者の高齢化も進んでいて、専門性の高い人材の確保も難しくなっている。事業承継の円滑化は喫緊の課題だ。

昨年4月に北海道小規模企業振興条例を定め振興策も策定した。経営体質強化、事業承継の円滑化、創業などの促進を柱に施策を展開する。道内各地の支援体制整備も進めている。

(大塚) 今年41期目で創業当初から海や地域資源を活用した事業を展開している。ダイビングショップで機材を販売したり、海洋調査も行っている。親族外の事業承継として私が社長に就任した。経営状態は厳しかったが、北海道事業引継ぎ支援センターを知り、いろいろと相談した。資金調達に結びつけ、海を使った新たな観光事業に進出している。古民家をリノベーションしたテラスをオープンするなど、地域観光の振興に取り組んでいる。

(佐々木) 1991年に知識融合化法の第1号として認可されて創業し、2008年私が32歳の時に現在の会長から事業承継した。申請時には北海道経済産業局などにお世話になり融資も受けられた。非親族だが時間をかけて社長の仕事を引き継いでいる。マーケティング会社として戦略策定やデータ分析などまでBツーB、BツーCにかかわらずダイレクトマーケティングの業務全般を請け負っている。今年2月には札幌証券取引所アンビシャス市場に上場した。東京での仕事が中心だが、北海道での事業も大切にしたい。

(田中) 1952年に小樽で埼玉・川越出身の祖父が創業して、鋳造技術を伝承して下水道マンホール鋳鉄蓋などを製造している。「ご当地マンホール」といったデザインで北海道内の約100くらいの自治体に納入している。新規事業として機械部品や建設などさまざまな分野の鋳物にも取り組んでいる。このほか溶接金網も製造している。鋳物業界は廃業も多く厳しい状況だ。私は昨年6月社長に就任した。世襲で4代続いているが、これから100年企業を目指す。

(北原) 72年に父が急逝し酪農関連の資材を中心とする北原電牧という会社を継承した。父はワンマン社長で私は大学生だった。私は40年社長を務め、子供が2人いるがどちらも子供の頃から夢があり事業を継がないため、6年前にM&A(合併・買収)で社長を退任した。会社が好調だったこともあり、社員は驚いた。事業承継型のM&Aは会社がうまく行っているからこそ成立し独立性も担保できるのではないか。その後還暦を過ぎて13年に中小企業診断士の資格を取り、北海道事業引継ぎ支援センターで事業承継を手伝っている。2年間で120社を支援しM&Aは6件成約までお手伝いした。「北原さんに会えて良かった」と言われたときは感動した。

(穴沢) 行政の立場から意見を伺いたい。

(宮本) 事前の準備がなく突然承継する際にはやはりご苦労がある。現経営者が事業継承計画を早めに作ることは大切だ。法改正によって民間機関からの借り入れもしやすくなるはずだ。またM&Aなどには心情的な抵抗があるかもしれないが、事業やネットワークを引き継ぐ普通の手段として前向きに考えてもらいたい。また経営者には事業承継の相談をする相手がなかなかいない。支援センターをはじめとする機関の役割も重要だ。

(阿部) 資金面の支援策もさらに整備する。その上で事業を継続し承継していくための、日々の経営についての支援も行う。

(2017/7/19 05:00)

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